3. 訴え提起の方式
民事訴訟手続は原告が裁判所に訴えを提起することによって開始される(不告不理の原則、訴えなければ裁判なしの原則、処分権主義)(民事訴訟法第246条)。つまり、裁判の対象となる紛争は、私人間の生活関係において生じ、そこでは 私的自治の原則 が適用されるため、民事訴訟手続を利用するかどうかは、私人の判断に委ねられている。
訴えの提起は、原則として、訴状 を裁判所に提出することによってなされるが(第133条)、簡易裁判所には、口頭ですることができる。
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訴額が140万円以下の訴えは簡易裁判所の管轄となる(裁判所法第33条第1項、第24条参照)。
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(1) 必要的記載事項
訴状には、以下の事項を必ず記載しなければならない(第133条第2項)。
@ 当事者および法定代理人
当事者とは原告および被告を指し、訴状には両者の住所、氏名、また、裁判所からの書類の送付先などを記載する必要がある。
当事者が未成年または成年被後見人の場合は、法定代理人(例えば未成年者の場合は親権者である親)の氏名・住所を記載する必要がある。
当事者が法人の場合は、代表者の氏名・住所を記載しなければならない(第37条、民事訴訟規則第18条)。
A 請求の趣旨および原因
請求の趣旨 とは、原告が裁判所に求める判決の内容を簡潔に記したものである。例えば、以下のようになる。
・給付の訴えの場合
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「被告は原告に対し金100万円を支払えとの判決を求める」
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・確認の訴えの場合
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「別紙目録記載の建物につき原告が所有権を有することを確認するとの判決を求める」
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・形成の訴えの場合
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「原告と被告とを離婚するとの判決を求める」
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原告の請求が完全に認容される場合、裁判所は請求の趣旨に相当する判決(判決の主文)を下すことになる。
請求の原因とは、請求の趣旨を補充し、請求の特定に必要な事実を指す(民訴規則第53条第1項)。例えば、「被告は原告に対し金100万円を支払えとの判決を求める」という請求の趣旨のみでは、原告・被告間のどの債権・債務が裁判の対象になるか特定されないので、どのような理由に基づき、原告は被告に金銭の支払いを請求するのか具体的に記載する必要がある。例えば、@
XX年XX月XX日、原告は被告に100万円を貸したが、A支払期限を過ぎても被告は返していないことを記載し、訴えの内容を特定しなければならない(参照)。
@とA(つまり、必要的記載事項)の記載に不備がある場合、裁判長は相当の期間内に補正を命じなければならない(裁判長の訴状審査権)(第137条第1項)。原告がこの期間内に補正しないとき、訴状は
却下 される(同第2項〔訴状却下命令〕)。この処分に不服がある者は 即時抗告 をすることができる(同第3項)。
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却下 とは、裁判所が訴えの実体的内容(訴訟物)について審査することなく、門前払いすることである(詳しくは こちら)。 |
(2) 任意的記載事項
裁判所が早期に事件の概要を理解し、争点整理を行うことができるようにするため、さらに、以下の事項について具体的に記載したり、資料を添付することが求められる。ただし、記載や添付がなくても、訴状に不備があることにはならない。そのため、前述した
必要的記載事項 に対比させ、任意的記載事項と呼ぶ。
@
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請求を理由付ける事実(攻撃防御方法)、重要な事実や証拠(民訴規則第53条第1項)
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A
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不動産事件では登記簿謄本
手形・小切手に関する事件ではその写し(民訴規則第55条)
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(3) 訴状の提出にかかるその他の要件
申立手数料を納めるため、原告は、訴状に訴額に応じて収入印紙を貼らなければならない(民事訴訟費用等に関する規則第3条など参照)。
また、被告の数に応じ、訴状の副本を添付し、送達費用を予納する必要がある(同規則第11条、第12条)。
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