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E U に お け る 民 主 主 義 の 欠 陥
 

 ECは、1950年代、加盟国政府のイニシアチブに基づき発足し、また発展してきた。その設立から早50年以上が経過したが、加盟国主導の統合という枠組みは、基本的に変わっていない。加盟国政府の代表で構成されるEU理事会を主たる立法機関とし、加盟国政府によって選出される欧州委員会に(副次的な)立法権ないし行政権限を与える一方で、EU市民の代表機関である欧州議会の立法権限を限定することは、国内憲法上の民主主義の要請を満たしていないとされ、厳しく批判されている(民主主義原則上の欠陥ないし民主主義の赤字)。加盟国からEUに、ますます多くの権限が委譲され、EUの政策分野が拡大するにつれ、民主化の要請も強まっているが、それにもかかわらず議会の権限強化の動きが緩慢なのは、国益に関わる重要事項ないし伝統的に国家の特権されてきた案件について、加盟国が自らの権限を放棄せず、欧州議会による関与を排斥したいためであるが、他方、以下の観点より、欧州議会の権限強化にも問題があるとされている。

 

@

欧州議会の議席の不均衡

  詳しくは こちらこちらも参照

A

欧州議会選挙に関する法律の不備

  詳しくは こちら

B

27の加盟国の国民が同一のテーマについて、同じ条件で議論することの困難さ


 つまり、議会制民主主義に不可欠な要件が整備されていないとされる。さらに、


C

議会制民主主義の徹底は、中小国の利益をかえって害することが指摘されている(多数決制度の下では、人口が圧倒的に少ない中小国の見解は反映されない)。



 それゆえ、EUでは、加盟国政府の行動を国内議会がコントロールすることを通し、民主化の要請を満たすべきと考えられる(国内議会によるEU立法行為の間接的統制)。


      リストマーク EUの立法手続に関する国内議会の関与



 なお、民主主義原則の観点からは、欧州議会の立法権限の弱さだけではなく、EU理事会の立法手続(全会一致制度、特定多数決制度における各国の持票数の不均衡、審議の非公開)や、欧州委員会に対する民主的統制力が弱いこと(参照)も問題視されている。

      リストマーク リスボン条約による改正
        ・特定多数決制度について

        ・法案の審議や評決の公開


(参照)

ゲオルク・レス著「EUの民主主義制度の改正について」
(Professor Dr. Dr. Dr. h.c.mult. Georg Ress, Demokratieprinzip im Rahmen der Reform des EU-Vertrages)
平成国際大学法政学会編『平成法政研究』第3巻第1号(1998年11月)87〜111頁




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