欧 州 議 会 選 挙 法



選挙 EEC設立当初、欧州議会には加盟国議会の議員が派遣されていたが、欧州議会の民主的基盤を強化するため、1979年より、議員は各国で実施される普通選挙によって直接選出されている。従来、この選挙は、EC条約ではなく、1976年に制定された「直接選挙の導入に関する議定書」第1条に根拠を有していた。その他、議席数の配分(第2条)および議員の任期(第3条)も同議定書の中で定められており、欧州議会に関する規定は、必ずしも体系的に整理されているわけではなかったが、アムステルダム条約第6条第65号に基づき、これらの規定はEC条約内に組み込まれている(EC条約新第190条第1項ないし第3項参照)。



リストマーク EC条約190

1

 議員は、普通・直接選挙により選出される。

2項:

各加盟国の議席数について定める。

3

 議員の任期は5年とする。



 一部の規定がEC条約内に移されたとはいえ、直接選挙の導入に関する議定書は廃止されておらず、選挙手続の重要事項(や議員の地位等)について定めている。なお、同議定書は度々改正されているが(前回は200269)、詳細な選挙手続は加盟国が独自に規定しており(第7条第1項、現行第8条第1項参照)、この国内法に基づき、欧州議会選挙は各国で実施される。つまり、欧州議会選挙は、ECレベルで統一された選挙法に基づき実施されるのではなく、個々の加盟国の国内法に従い行われる。各国の選挙制度の相違に基づき、党派勢力に大きなひずみが生じることもあったが、このような弊害を除去し、欧州議会の民主的基盤を強化するためには、各国選挙法の統一が望ましいとされている。そのため、従来より、EC条約(旧第138条第3項)は、欧州議会に統一選挙法案の作成を要請し、理事会は全会一致にて統一選挙法を制定する旨を定めていたが、今日までこの要望は(完全には)達成されていない。国内法に基づく選挙も暫定措置として許容されるとする見方もあるが、1979年より実施されている制度を現在でも「暫定措置」としてみることができるかどうかは疑わしい。なお、統一選挙法が制定されないのは、欧州議会自身が法案を作成しないことによるところが大きいと見る立場もあり、同議会は法案の作成を怠っているとして訴えられることもあったが、EC裁判所は判断を回避している。マーストリヒト条約の修正協議では、この点を考慮し、統一選挙法案作成の要件を緩和した。すなわち、欧州議会は、@統一選挙手続か、または、A全加盟国に共通の諸原則に合致する選挙手続を(理事会に)提案すればよいことになった(EC条約第190条第4項)。比較法的な手法を用いる後者は、アムステルダム条約によって新たに設けられた選択肢であるが、それは、前者のように、選挙法を画一的に定めるのではなく、原則的事項のみを決定し、細かな点は加盟国の判断に委ねるため、各国の承認をえやすい。なお、Aの方法が新たに導入されたことより、従来の選挙手続は、全加盟国に共通する諸原則にのっとっていないとも解されるが(それゆえ欧州議会は、そのような選挙手続について提案しなければならない)、実際には、現行制度は各加盟国に共通の原則(すなわち、一般、直接、自由、平等および秘密選挙)に基づいていると解される。もっとも、その内容(特に、平等原則の内容)には開きがあるため、その調整が今後の課題である。加盟国に共通の選挙法原則を見出す際には、欧州人権条約の第1議定書第3条も参考になる。同規定は、自由および秘密選挙の実施を締約国に義務づけている。






リストマーク 直接選挙の導入に関する議定書 リストマーク


 前述した通り、直接選挙の導入に関する議定書は、欧州議会選挙の重要事項について定めているが、2002年6月・9月の改正 を経た現行法は、以下の要件について定めている(参照)。


比例代表制によること(第1条第1項)

一般、直接、自由かつ秘密選挙が実施されること(第1条第3項)

 なお、EC条約第190条第4項は、一般かつ直接選挙の実施についてしか言及していない。

各国は、議席を獲得するために最低限必要な票数を設定することができるが、これは全国規模の集計結果において、全投票数の5%を超えてはならない(第3条)。

各有権者は1回のみ投票しうる(第9条)。

選挙期間はECによって統一的に定められるが(ある週の木曜日の午前中から3日後の日曜日までとする)、その期間内であれば、加盟国は、選挙日・時刻を自由に決定しうる。(第10条第1項、2004年6月の選挙は、10日から13日にかけて行われた〔参照〕 )。開票日・時刻についても同様であるが、もっとも、開票結果は、全加盟国で投票が終了するまで公表してはならない(第10条第2項)。

加盟国は選挙費用に上限を設けることができる(第4条)。


欧州議会は、各国の公式な選挙結果に照らし、議席配分について調査する(第12条)

補欠選挙手続は各国によって定められる(第13条第2項)。

2004年6月の欧州議会選挙より、国内議会の議員は、欧州議員を兼任してはならない(第7条第2項)。


 その他の事項については、各国が独自に定めることができるが(第8条第1項参照)、比例代表制は維持されなければならない(第2項)。

 







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