チベット問題や北京オリンピック開会式への参加に関し、EU加盟27ヶ国の見解は統一されていないが、今年、設立50周年を迎えた 欧州議会 の立場は明確である。同議会内の Tibet Intergroup は、中国はチベットを占領しており、独立国家の建設を阻んでいるとみている。
また、2008年3月の暴動やデモ弾圧を受け、同議会は4月10日に 決議 を採択し、デモを弾圧した中国政府を非難する共に、同政府に対し、@ チベットとの対話、A 暴動の際に負傷したチベット人の医療救済や逮捕された者に対する法的扶助、また、B
人権保護の改善や報道・外交活動の自由化等を要請している。さらに、EU理事会議長国(スロベニア)に対しても、加盟国首脳やEU外交・安全保障政策の上級代表の北京オリンピック開会式への出席について、EUとしての見解をまとめるよう要請している。なお、6月3日付けの
Frankfurter Allgemeine 紙に掲載されたインタビュー記事において、欧州議会の Pöttering 議長(ドイツ出身)は、オリンピック開会式に出席すべきではないとする自らや議会の立場に変わりはないと述べている(参照)。
ところで、前掲の欧州議会の決議には法的拘束力がない。また、EUの主たる立法・政治機関は 欧州理事会 ないし EU理事会 であり、EUの統一的政治声明としての意義も持たない。さらに、EUを対外的に代表する権限(外交権限)は欧州議会に与えられていない。それゆえ、前掲の決議は、中国政府に対するよりも、むしろ、EU内の立法・行政機関や加盟国政府に対し向けられた意味合いが強いと考えられる。特に、欧州委員会は、議会の要請に応え活動することが義務付けられている。
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