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EUの旗 中 国 に 対 す る制 裁 解 除 の 動 き 中国の旗


 1989年6月、当時のEC加盟国は、中国による人権侵害や民主主義運動の抑圧に抗議し(天安門事件)、制裁を発動している(参照)。この制裁には、中国への武器輸出の禁止が含まれているが、その解除を求める声がEU内では高まりつつある。他方、同じく中国に対し制裁を発動している米国は、解除に懐疑的である(参照)。

 2005年3月14日、中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)は、台湾の独立を武力で阻止することを認める法律(反国家分裂法)を制定したことから、米国は、制裁の解除に改めて懸念を示しているが、EUは従来の方針を崩していない。

 この点について、Ferrero-Waldner 欧州委員(対外関係担当)は、米国の憂慮は理解できるが、新たに制裁を発動するという発言は聞いていないと述べた。また、中国はEUの重要なパートナーであり、ジンバブエやその他の制裁対象国と同様に扱うべきではないとした上で、第3国への武器輸出に関するEUの行為規範の適用を徹底するため、制裁の解除が悪い方向に発展するわけではないと語った(参照)。 なお、前掲したEUの行為規範は、1998年に制定され、第3国への武器輸出を判断する基準を8つ設けているが(例えば、人権遵守の有無)、法的拘束力はない。中国に対する制裁の解除は、この行為規範の強化を前提とする見解も強く主張されている(参照)。

 2005年3月の第4週、中国外相のEU訪問が予定されているが、制裁の解除について話し合われることになっている(参照)。

 



New 早期制裁解除 見送りへ


 2005年4月15・16日、EU加盟国の外相は、ルクセンブルクで非公式の会合を開催したが、懸案の中国に対する制裁(武器輸出の禁止)の解除については、全加盟国の合意が得られないことが明らかになった。そのため、特に独仏が強く要請していた制裁の早期解除は見送られることになった。

 制裁の解除には、全加盟国の合意が必要であるが、解除は、[アメリカの]重大な国益に関わる挑戦であり、[中国に対し]誤ったシグナルを発することになるとする合衆国政府の発言がEU加盟国首脳にも大きな影響を与えたとされている。また、4月14日、欧州議会は、431票対85票の大差で、制裁の解除に反対する決議を採択している。

 なお、制裁解除に積極的なドイツ政府内でも、見解は大きく割れており、Fischer 外相(緑の党)は、早期解除に反対している。同外相によれば、人権や民主主義の点で、中国に本質的な改善は見られず、国連人権憲章の批准や台湾との軋轢の解消が制裁解除の前提になるとされる。

 今後の予定としては、5月に共通外交・安全保障政策の Solana 上級代表 が米国に渡り、EU側の見解を伝える他、6月の欧州理事会で協議されることになっている。



(参照) FAZ v. 15. April 2005 ("EU hebt Waffenembargo gegen China vorerst nicht auf")

Der Standard v. 15. April 2005 ("EU-Waffenembargo gegen China bleibt vorerst")


日本、EUの中国制裁解除に懸念示す



(2005年4月16日)



(参照) Der Standard v. 13. März 2005 ("EU will Waffenembargo gegen China aufheben")
 

Die Welt am Sonntag v. 13. März 2005 ("Europas Waffen für China?")


EUの経済制裁

日本、EUの中国制裁解除に懸念示す




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