ヨーロッパ諸国は国際問題により強い関心を持ち、また、民主主義や自由の抑圧に関して非常に敏感であるが、2008年3月、中国政府がチベット人のデモを弾圧したことをきっかけに、チベット問題が再び注目されるようになった。多くのチベット人(難民)が居住する欧州諸国・地域では連日、デモが行われていることもあり、メディアの扱う量も我が国を大きく上回っている。
フランス、ドイツ、ポーランドなど、すでに幾つかのEU加盟国は、2008年8月8日に予定されている五輪開会式への出席(首相ないし外相の出席)を拒否する声明を出しているが、オリンピック開催時期にEU理事会議長国を勤めるフランスの
Sarkozy 大統領の態度が特に注目される。なお、スウェーデンなど、出席見送りに反対するEU加盟国もある(参照)。
このような状況を反映し、3月28・29日のEU理事会(加盟国外相会議)では、開会式への出席について、EUとしての立場はまとまらなかった。もっとも、EUは暴力行為を厳しく批判するとともに、チベットとの対話を中国政府に要請することで見解が一致した。実際には、確定的な方針を決定することは時期尚早で、不可能といえよう。なお、首相ないし外相の開会式参加と、スポーツ選手の競技への参加は別問題で、後者を疑問視するEU加盟国はない(参照)。
チベット問題については、欧州議会 でも審議される予定であり、経済制裁決議案は保守系の政治家によってすでに作成されている。決議案は、4月10日の総会で取り上げられる予定であるが、採択される場合であれ、その決議は法的拘束力・執行力を持たない。また、EUや加盟国の公式見解となるものでもないが、中国政府に対してだけではなく、EUや加盟国にどのような影響を与えるか注目される。
欧州議会、チベット問題に関する決議を採択
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