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練習問題

EU法


〔模範解答〕

 最後の段落内の「EUは直接税(所得税や法人税など)や間接税(消費税や付加価値税など)に関する法・・・・を制定することはできません」という文に誤りが含まれています。

 詳細には、問題文にあるように、EUは直接税に関する法を制定することはできません。これは、問題文にもある通り、直接税は加盟国の歳入に大きく、かつ、直接的な影響を与えるためです。そのため、加盟国は直接税を制定する権限を保留しており、EUに委譲していません。

 他方、「間接税」に関する法を制定する権限であれば、加盟国はEUに与えています。そのため、EUは間接税に関する法を制定することができ、この点が誤りとなります。

 間接税に関する立法権がEUに与えられている理由は次の通りです。

 我が国における消費税は、EU内では付加価値税と呼ばれますが(厳密には、両者は異なりますが、ここでは触れません)、この税が課されるかどうか、また、課される場合にはその税率によって、代金の総額ないし支払額が変わってきます。

 例えば、税抜き価格が200ユーロ(2020年5月の時点では約23,200円)の靴があるとします。ある加盟国が税率を8%に設定していれば、消費者が購入に際し、支払うのは216ユーロ(25,056円)ですが、他の加盟国が税率を30%にしていれば、260ユーロ(30,160円)となり、44ユーロ(5,104円)の違いが生じます。


 ・200ユーロの靴 
  • 付加価値税が8%とすれば、216ユーロ(200+税16ユーロ)、25,056円
  • 付加価値税が30%とすれば、260ユーロ(200+税60ユーロ)、30,160円
 差は44ユーロ(5,104円)
  
 
 これは、EU内の商品の流通に影響を与えます。つまり、税率が低い国から高い国には商品が輸出されにくくなりますが、これを悪用する、つまり、他の加盟国からの輸入を抑制するために、税率を高く設定する加盟国もあるでしょう。これは、域内における自由かつ円滑な商品やサービスの流通といったEUの理念・目標に反します。

 この理念・目標を実現する手段として、EUには加盟国の付加価値税(間接税)を調整する権限が与えられています。なお、EUに与えられているのは、加盟国の間接税を「調整」する権限であり、「統一」する権限ではありません。調整と統一の違いについて、テキストの15頁を読んでください。


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