EU法は、種々の権利や自由を個人に保障しているが(詳しくは こちら)、これらの法益が加盟国によって侵害される場合、実効的な救済が図られなければならない(EUによって侵害される場合については こちら)。EU法上、救済手続が整備されている場合は、それを利用すればよいが、このようなことはむしろ例外的である。そのため、ECJ は、実効的な救済手続の整備を加盟国に義務付けている。
例えば、ある加盟国が国内法に基づき、スポーツくじの販売を禁止することは、開業の自由 や サービス提供の自由 の侵害に当たるため、禁止処分を受けた者には、国内の救済手続が保障されなければならない。同人がスポーツくじを禁止する国内法の適法性を争い、国内裁判所に提訴するものの、国内手続法上、具体的な訴訟事件における法令審査(付随的法令審査)請求は認められておらず、訴えが却下される場合は、「実効的な国内救済」の要請に反するであろうか。Unibet
事件において、ECJ は、@ 個人が直接、国内法の適法性を争うことができないにせよ、加盟国のEU法違反から生じた損害の賠償を訴追しうる場合(この手続において、国内法の適法性が審査される)(Case
C-432/05, Unibet [2007] ECR I-2271, paras. 56-59)、また、A スポーツくじの禁止に関する例外を申請しうる場合(paras.
60-61)は、「実効的な国内救済」の要請に反しないと判断した。これに対し、個人が行政処分や刑事処分を受け、行政手続や刑事手続において、スポーツくじを禁止する国内法の適法性を争うことが唯一の救済手段である場合は、上掲の要請に反すると判断した