EUの司法救済手続


問題1 次の文章を読み、(  )内に適切な語または文章を入れなさい。

 EC条約は、EC法の適法性(有効性)を争い提訴したり、ECに対し損害賠償を訴求する権利を私人に与えている。個人に訴権が与えられている点で、ECは、一般的な国際機関に比べ、権利保護に厚いと言うこともできる。もっとも、個人がEC法の適法性を争い(   )に訴えを提起する場合は、問題のEC法規が個人に(   )かつ(    )に関わっていないければならない。このように個人の提訴権が制限されているのは、EC裁判所に多数の訴えが係属することを防止するためである。しかし、この要件を厳格に解し、個人の裁判所へのアクセスを制限すると、実際に権利保護が必要な者の訴えも不適法となり、ECの権利保護制度は形骸化しかねない。

 この制度上の欠陥は、例えば、加盟国が個人 (国民や国内企業)のためにEC裁判所へ提訴することで補いうる。実際に、バナナ市場規則に関する紛争において、ドイツ政府は、国内のバナナ取扱業者の要請を受けて、EC裁判所に提訴しているが、訴訟手続における不手際は顕著であった。すなわち、同政府は、バナナ市場規則による権利侵害の実態について、詳細に主張することができなかったのである。

 個人の提訴権の制限を補いうるその他の措置としては、個人はまず国内裁判所に提訴して、同裁判所がEC裁判所にEC法上の問題に関する判断(例えば、共同体法の有効性や権利保護の必要性の有無など)を求めるという方法を指摘しうる。国内裁判所に訴えを提起しうるのは、(      )だからである。この手続を(    )と呼ぶ(EC条約第234条参照。この制度は、EC法上の問題について、国内裁判所は判断してはならず、EC裁判所に判断を委ねなければならないために設けられているが、この手段によると、権利救済手続が長期化するといった欠点がある[1]。また、EC裁判所に先行判断が求められるとは限らない。なぜなら、(      )。仮にこれが求められるにしても、EC裁判所が個人に有利な判断を下すとは限らない。実際に、バナナ市場規則に関する事案においても、当初、EC裁判所は、権利侵害の事実を認定していなかった。ところが、後日、ドイツ連邦憲法裁判所が、権利侵害の可能性を指摘すると、それを踏襲し、ドイツ国内の裁判所は、バナナ市場規則の有効性を疑い、この点に関する先行判断をEC裁判所に求めた。その結果、EC裁判所も、ドイツ連邦憲法裁判所と同じように、権利侵害の可能性を認めるようになった[2]

   リストマーク EC法上の裁判を受ける権利



問題2 バナナ市場規則によって、どのような権利の侵害が考えられるか。




[1]

そのため、EC裁判所や国内裁判所による仮の権利保護が必要になる。なお、後者がこれをなす場合においては、後者もEC法の有効性や適用について判断しうるが、もっとも、その際にはEU裁判所に先行判断を求めなければならない。

[2]

この点について、入稲福智「ECの政治と法」平成国際大学法政学会『平成法政研究』第5巻第1号(2000年)55頁以下を参照されたい。










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