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8. ECの対外的権限


8.1. AETR 判決法理

 海上輸送や航空輸送は、国際的な性質を持ち合わせているが、ECが第3国や国際機関と交渉する権限について、EC条約は明確に規定していない。また、第300条(ECによる国際条約の締結)より、ECの対外的権限が導かれるわけではない。なぜなら、同条は、条約の締結手続について定めるのみで、ECに締結権限を与えるものではないためである。このような状況は、ニース条約 によっても修正されていない。もっとも、従来より、EC裁判所は、ECの対内的権限より対外的権限が派生するとすると判断している。1971年に下された AETR判決 は、共通運輸政策に関する事案に基づいている。


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 8.2. WTO諸協定の締結権限

 AETR判決 によれば、第2次法がすでに制定されている場合、ECは条約締結権限を有することになるが、1976年、EC裁判所は、第2次法の制定前であっても、条約締結権限が派生する場合があると述べている(詳しくは こちら)。これに対し、1994年、同裁判所は、再び厳格に解し、域内の法令制定権限より直ちに対外的権限が生じるものではないと判断した(Opinion 1/94 WTO [1994] ECR 5267, paras. 48, 53, 76 et seq.)。また、通商協定を締結する権限(第133条)に基づき、運輸政策に関する協定を締結することはできないとも述べているが、現行第133条第6項第3款(ニース条約による改正)は、その旨を明瞭に定めている。


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8.3. Open-Skies 判決

 第3国との航空輸送に関し、従来、加盟国は、独自の交渉を行ってきたが、2002年11月5日、EC裁判所は、このような実務はEC法に違反すると述べた。つまり、航空運輸に関し、EC条約は、ECの対外的権限について明瞭に定めていないが、個々の加盟国の行為がすでに発せられている第2次法(EC域内に関する法令)の有効性を害する場合には、加盟国は権限を失うとしている。@ 米国の航空会社がEC域内で運航する際の運賃や、A コンピュータ予約システムの利用は、すでに第2次法が制定されている案件に関わるため(第80条第2項参照)、加盟国からECに権限が完全に委譲されていることになる (Cases C-466/98 bis C-469/98, C-471/98, C-472/98, C-475/98 and C-476/98 Commission v. UK, Denmark, Sweden, Finland, Belgium, Luxembourg, Austria and Germany [2002] ECR I-9895, paras. 80-137)。






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