2005年5月なしい6月、フランスとオランダで実施された国民投票で欧州憲法条約の批准が否決された背景には、同条約や欧州統合に対する懐疑論だけではなく、国内政治に対する国民の不満が存在した(フランスの状況、オランダの状況)。つまり、政権政党に対する不信感が憲法条約の批准に反対する要因の一つになった。このような状況は欧州議会選挙でも見られ(参照@、A)、国内の政治問題がEU統合に影響を及ぼすことは特異な現象ではない。リスボン条約の批准に際しても、どのような影響が生じるか注目されるが、すでに、スロバキア では、与党が作成したメディア法案をめぐり国会が紛糾している。Dzurinda 元首相が率いる野党は、民主主義を脅かすメディア法案が修正されない限り、リスボン条約批准に関する国会審議をボイコットするとしている(参照)。
2008年2月6日に国会(上下両院)が解散し、4月13・14日に選挙が実施されるイタリアの状況も注目すべきであるが、同国の Napolitano
大統領は、選挙期間中であるとはいえ、国会はリスボン条約の批准に向けた審議を行うべきであると訴えている。批准に必要な国内法案はすでに Prodi
政府から国会に提出されている(参照)。
2008年3月、ポーランドでは、リスボン条約の批准をめぐり、与野党の対立が激化している。条約草案は、2007年10月、ポーランドを含む全てのEU加盟国によって採択されているが(参照)、その直後の総選挙で、Kaczynski 大統領が所属する当時の与党「法と正義」は敗れ、野党に回った後は、リスボン条約の批准に反対している。これは、自党内の反EU派を引き込むための戦略とも解される(詳しくは
こちら)。
また、オーストリアでも与野党間の対立が激化しているが、野党は、特に、政府が情報を提供していないことを批判し、国民投票の実施を訴えているのに対し、政府側は、野党はリスボン条約について誤った情報を告知し、国民の不安を駆り立てていると再批判している(詳しくは こちら)。
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