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Europe 2020



 2010年6月17日、欧州理事会は Europa 2020 を採択した(参照)。これは、EUが直面する種々の政策課題(経済成長、雇用の創出、社会的連帯性の強化、地球環境保護)に関し、EUの中・短期的な戦略目標を網羅したものである。2010年に「リスボン戦略」が失効するの受け採択されたが 、「リスボン戦略」やその後に設けられたEUの政策目標と大きく異なるものではない。


@ 雇用の促進

 20〜64歳の男女の雇用率を75%に引き上げる。なお、リスボン戦略では、15〜64歳の男女の雇用率を70%にするとされていたが、Europa 2020は、19歳未満の就業者は少ないという点を考慮し、修正している。

 また、若者、高齢者や単純労働者(技術力の低い労働者)の雇用を促進する。また、EU内に適法に滞在する移民をEU社会により良く統合させる(雇用政策について、EUの機能に関する条約第148条参照)。

 
A 研究・開発条件の改善

 研究・開発は、将来の経済成長を牽引する重要な要素となる。研究・開発を発展させるため、EU内における教育制度の質を改善し、研究・開発や学術交流を奨励する。

 また、同分野における公共・民間投資をGDPの3%とする(新しい「リスボン戦略」参照)。


B 環境政策(気候変化)やエネルギー政策上の目標の実現

 温室効果ガスの排出量を1990年水準比で20%削減する。なお、2012年以降の期間に関し、先進国がEUに匹敵しうる程度の削減を約束し、また、発展途上国がその責任と能力に照らし、適切な貢献をなす場合、EUは2020年までに30%削減する(参照)。

 また、再生可能エネルギーの消費量を20%増加させ、エネルギー効率を20%改善する(参照)。


C 教育水準の向上

 特に、退学率を10%未満に抑える一方で、30〜34歳の者が大学教育(またはこれに相当する教育)を終了する割合を40%以上にする。


D 特に、貧困層の削減を通じた社会的統合の促進(social inclusion)

 少なくとも2000万人を貧困や社会的排除の危険性から解放する。なお、現在、貧困層は1億2000万人とされているが、2010年は “European year for combating poverty and social exclusion” に指定されている(参照)。
 



 これらの政策目標は加盟国によって実現されるが、具体策の決定に際し、加盟国は欧州委員会と協議するものとされている。また、2010年秋、加盟国は国内プログラムを提示することになっている。

 総じて、Europe 2020は、従来の戦略に大きく異なるものではなく、それを再確認したものである。これは既存の目標がまだ実現していないことを意味するが、欧州理事会は、実施の必要性を強調している。