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経済ガバナンス(economic governance)の強化



 2010年6月17日、欧州理事会は、継続する危機的状況を踏まえ、EUの経済ガバナンス(economic governance)を強化する必要性を確認した。同理事会決議の概要は以下の通りである。

 現在の危機 は、EUの経済ガバナンス(特に、財政と包括的なマクロ経済の監視)の脆弱さを露呈した。そのため、経済政策の調整を強化することが重大かつ緊急の課題である。

 財政規律に関する現行法は完全に実施されなければならない。ただし、ユーロ導入国の特別な状況を適切に考慮する必要がある。2011年以降、加盟国は自国の予算手続を考慮しながら、次年度の財政計画(財政均衡計画)を欧州委員会に提示する。これは春に “European semester” の枠内で実施する。なお、「自国の予算手続を考慮しながら」という文言が盛り込まれているのは、欧州委員会に提示する前に、国内議会に提示すべきという特定の加盟国(イギリス)の見解を踏まえたものと解されている 。

 ところで、欧州理事会の直前、独仏首脳は国内経済政策の調整を改善するため、「経済政府」(Wirtschaftsregierung)を設けることで合意していた。ただし、これは新たな機関を設置するのではなく、加盟国首脳の会合がその役割を果たすものとされた。当初、フランスのサルコジ大統領はユーロ導入国だけの組織とする構想を抱いていたが、すべての加盟国を含めるべきとするドイツのメルケル首相の見解に譲歩している 。なお、経済政策の基本的理念は加盟国間で異なるため(例えば、自由貿易主義か、保護主義か)、政策の調整は容易ではないと解される 。


 

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