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229a (新規定)

Without prejudice to the other provisions of this Treaty, the Council, acting unanimously on a proposal from the Commission and after consulting the European Parliament, may adopt provisions to confer jurisdiction, to the extent that it shall determine, on the Court of Justice in disputes relating to the application of acts adopted on the basis of this Treaty which create Community industrial property rights. The Council shall recommend those provisions to the Member States for adoption in accordance with their respective constitutional requirements.

 

解説

 第229a条はEC条約内に新たに取り入れられた規定である。同条は、EC工業所有権に関する管轄権をEC裁判所に与えるための手続について定めているが、その主要な点は以下の通りである。

 

@ 委員会の提案を受け、理事会は、欧州議会の意見を聞いた後、全会一致にて規定(provisions/dispositions/Bestimmungen)を設け、EC裁判所に新たな管轄権を与えることができる(第229a条前段)。理事会は、加盟国に対し、これを国内憲法の規定に従い採択するよう勧告する(同後段)。新たな管轄権については、EC裁判所規程の中で定めることもできるが(第1審裁判所の管轄権について225条第1項および第3参照)、これによらず、加盟国による採択を要請している点で、この手続は厳格であり、EC条約の改正手続(EU条約第48条参照)に匹敵する。

A EC裁判所は、(EC条約に基づき制定された)EC工業所有権の創設にかかる法令の適用について生じた紛争に関し管轄権を有し、その範囲は、理事会によって定められる(第229a条前段)。

 

 なお、第229a条は、EC裁判所に管轄権を与えることができると定めているが、1審裁判所または司法小委員会に管轄権を付与することも可能であろう。すなわち、ここでのEC裁判所とは、第1審裁判所と司法小委員会をも含めた司法機関の総称を指していると解される。仮にそうではないにせよ、将来の司法制度の構築は、第229a条の文言に拘束されないため、第1審裁判所や司法小委員会、またはその他の司法機関に管轄権を与えることは妨げられない。

ところで、裁判手続は、解釈ないし判断の対象である実体法規や保護されるべき権利が設けられて初めて必要になる。第229a条で用いられているEC工業所有権の概念は包括的であるため、商標権、特許権、植物変種権(plant variety right)、意匠権、実用新案権など、あらゆる工業所有権がこれに含まれると解されるが、EC商標(Community trade mark)権については、すでに実体法が制定され、司法手続も導入されている。今後の課題としては、各機関の権限の調整や、司法小委員会や第1審裁判所への権限賦与が挙げられる。他方、EC特許(Community paent)権に関しては、現在、実体法と手続法の制定作業が進められている。

 




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