司 法 制 度 改 革 の 必 要 性 |
従来、EC裁判所は、欧州統合を「法の番人」としてだけではなく、「原動力」ともなり推進してきた。その判例法なくして、EC法は実効性を確保しえず、緊密な政策統合も実現しえなかったと解されるが、従来の功績はEC裁判所への信頼を増すだけではなく、その負担を大きくしていった。また、欧州共同体設立から50年、加盟国数が倍増し、潜在的原告が大幅に増加しただけではなく、EC法の爆発的な発展、また、EC裁判所の管轄権の拡大に伴い、申立件数を増加し続け、深刻な訴訟遅延を引き起こしてきた。
その対策として、加盟国はEU拡大ごとに判事を増員し、また、1988年には第一審裁判所を新設し、EC裁判所の管轄権の一部をこれに委譲してきた。その後、(EC裁判所の負担を軽減したり、司法行政の専門化という観点から)さらに多くの管轄権が第一審裁判所に与えられる一方で、EC裁判所では、裁判部(chamber/chambre/Kammer)やいわゆる小法廷(kleines
Plenum)による審理や、また、第一審裁判所では一名の裁判官による審理も認められるようになった。 |
(参照) |
入稲福 智「ニース条約に基づくEUの司法制度改革 ― 裁判所の負担超過・訴訟遅延対策 ―」平成国際大学法政学会編『平成法政研究』第7巻第1号(2002年11月)123〜155頁 |