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EUの競争政策(Competition Policy)


 1.  EU法と国内法の関係

  EU競争法は、複数の加盟国間にまたがる案件(例えば、ドイツ企業とフランス企業間におけるカルテルの合意)についてのみ適用される[1]。それゆえ、一国内のみにおける事案には、もっぱら国内法が適用される。

  他方、複数の加盟国間にまたがる案件は、EU法と加盟国法の両方の対象となりうる。双方の関係について定めるため、EU理事会は規則または指令を制定することができる(EUの機能に関する条約第103条第2項第e号、EC条約第83条第2項第e号参照)。なお、この立法手続において、欧州議会は拘束力のない意見を述べうる過ぎない。従来は、企業合併 に関する案件を除き、第2次法は整備されておらず、問題の解決はEU裁判所に委ねられていたが、2003年に規則(Council Regulation (EC) No. 1/2003, OJ 2003 L 1, 1)が制定され、企業間合意(第101条)や優越的地位の濫用(第102条)についても、初めて明文の規定が設けられるに至った。




 〔参考〕

 一連の判決において、EU裁判所は、第101条(EC条約第81条〔企業間の合意〕)と第102条(EC条約第82条、市場における優越的地位の濫用〕)は加盟国法に優先し、それゆえ、EU法上、許された競争制限が、国内法に基づき、再審査されたり、制裁が課されてはならないと述べている(See Case 14/68, WaltWilhelmandothers v. Bundeskartellamt [1969] ECR 1)。また、逆に、EU法上、違法とされた行為は、国内法に基づき、適法と判断されてはならない。



 

 前掲の理事会規則第1/2003号第3条によれば、加盟国間の取引を著しく害する企業行為に関し[2]加盟国の行政機関や裁判所はEU法(EUの機能に関する条約第101条と第102条)を適用しなければならない。もっとも、国内法を同時に適用することもできる。EU法と国内法が抵触する場合には、前者が優先する。他方、域内市場に影響を及ぼさない行為は、もっぱら国内法の対象となる。

 規則は、国内行政・司法機関によるEU競争法の適用に一貫性を保ち、また、欧州委員会との協力を実効的にするため、ネットワーク(European Competition Network(ECN))の構築について定めている。さらに、情報や証拠の交換義務についても規定されている。

 前述したように、国内裁判所にはEU競争法違反について審査する権限が与えられているが、第101条ないし第102条が定める競争阻害行為が存在するかどうか不明な場合は、EU裁判所に 先行判断 を求めなければならない。

 なお、すでに加盟国法に基づき、罰金が課されている場合、EUは、それを考慮して罰金額を決定しなければならない。つまり、制裁措置を二重に発動してはならない。すでにEU法に基づき制裁が加えられている場合も、同様である。



 

[1]     ただし、企業合併 については、異なる加盟国の企業の合併である必要はない。

[2]     なお、どのような行為が「加盟国間の取引を著しく害する」ものとして扱われるかという点について、欧州委員会が基準を示している。See OJ 2004, No C 101, 81.




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