2.2.2. 外国判決の執行
(1) 執行判決制度
外国の裁判所が下した判決は、民事訴訟法第118条の要件を満たせば、自動的に承認されるが(参照)、被告に金銭の支払いを命じる判決(給付判決)などは、単に承認されるだけでは足りず、任意に判決に従わない被告に対し執行する必要性も生じる。外国判決を我が国で執行するには、我が国の裁判所の執行判決が必要になる。この判決手続は、民事執行法第24条で定められている。
(2) 執行判決訴訟の性質
執行判決を求める訴訟手続の性質については、以下のように学説が対立している。
@ 確認訴訟説
執行判決訴訟の目的は、外国判決の効力(執行力)を我が国で確認することにあるとする立場である。この見解は、外国判決がもともと有する効力が、我が国でも拡張的に認められるに過ぎないとする。したがって、執行されるのは、外国判決そのものとなる。
A 形成訴訟説(通説)
これに対し、判決国における効力が、そのまま我が国でも生じるわけではなく、我が国の法律で認められた効力のみが与えられるとする立場が主張されている。つまり、執行判決によって、外国判決にも我が国における執行力が与えられるとする。この見解によれば、外国判決と我が国の裁判所が下した執行判決とが一体となって執行されることになる。
この形成訴訟説が通説であるが、承認は自動的になされるのに対し(参照)、執行については、外国判決より、直接効力が生じないのは理論的整合性に欠けるとする批判がある。
なお、外国裁判所の判決(給付判決)が確定していても、我が国で執行判決を得ていなければ、債務名義を得たことにはならないため、我が国の裁判所に再度、訴えを提起することも認められる(二重起訴の禁止に触れない)。
(3) 管轄裁判所
執行判決を求める訴えは、原則として、債務者の普通裁判籍所在地を管轄する地方裁判所に提起しなければならない。
この普通裁判籍がないときは、請求の目的物または差し押さえることができる財産所在地の地方裁判所が管轄権を有する(民事執行法第24条第1項)。
これらの管轄は、いずれも専属管轄である(民事執行法第19条)。
(4) 審理事項
執行判決訴訟において、我が国の裁判所は、以下の事項のみを審査する。
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外国判決が確定しているか(民事執行法第24条第3項参照)
この要件については、「外国」、「裁判所」、「確定」および「判決」について検討を要するが、この点について、最高裁は、民事執行法第24条所定の「外国の裁判所」とは、「外国の裁判所が、その裁判の名称、手続、形式のいかんを問わず、私法上の法律関係について当事者双方の手続的保障の下に終局的にした裁判をいうものであり、決定、命令等と称されるものであっても、右の性質を有するものは、同条にいう『外国裁判所の判決』に当たる」とし、香港高等法院の訴訟費用負担命令がこれに該当すると判断した(最高裁平成10年4月28日判決、民集第52巻第3号853頁)。
「判決」とは、強制執行しうる具体的な給付請求権を特定し、その給付を命ずる判決のみを指
す。そのため、例えば、確認判決は含まれない。その他の点では、外国判決の承認要件について定める民事訴訟法第118条の「判決」に異ならない(東京高裁平成5年11月15日判決、判タ835号132頁)。
裁判所による子供の監護権者の決定など、非訟事件の裁判 に関して、東京高裁は、第24条が直接適用されるわけではないが、非訟事件の裁判によって「請求権が形成されると同時にその給付を命ずるいわゆる形成給付の裁判及びそれに従たる非訟手続の費用確定の裁判については、民事執行法第24条が類推適用ないし準用され、執行判決を得て強制執行をすることができる」とした(東京高裁平成5年11月15日判決、判タ835号132頁)。
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民事訴訟法第118条各号の要件が具備されているか |
なお、外国の裁判の当否について調査してはならないことが、民事執行法第24条第2項で明定されている(実質再審査の禁止)。つまり、外国裁判所による法令解釈・適用の妥当性、手続法上の暇疵の有無、判決の結論や理由の妥当性について、我が国の裁判所は再審査してはならない。
もっとも、外国判決の承認および執行が我が国の公序に反しないかどうかは審査される(民事訴訟法第118条第2号)(事例)。また、民事訴訟法第118条第2号は、被告の手続的権利の保護を承認の要件に挙げているが、これについて審査することは、民事執行法第24条第3項によって禁止されない。
(5) 判決
前述した要件がすべて満たされている場合には、執行判決(認容判決)が下される。その主文において、外国裁判所の判決による強制執行を許す旨が明記されていなければならない(民事執行法第24条第4項)。
なお、要件が満たされていないときは、訴えを却下しなければならない(民事執行法第24条第3項)。
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