Top      News   Profile    Topics    EU Law  Impressum          ゼミのページ

     
 
    
ドイツ国旗

独仏首脳 さらなる危機の回避を訴える

フランス国旗


 2005年6月10日(金)、独仏首脳は、去る4日(土)のベルリン会合 に続き、パリで会談した。主要議題は、EUの次期財政計画 についてであったが、両首脳は、イギリスの優遇策 の見直しの必要性について合意し、イギリスに譲歩を求めた。1984年より、英国は、EUへの財政負担が大幅に軽減されているが、加盟25ヶ国の中で最も裕福な国の一つに発展したイギリスが、従来の特権を放棄することは「信義・誠実」(Glauben)の問題ではなく、「期待」(Erwartung)に応えることであると Schröder 首相は10日の会談後に述べている。また、前日の9日、Chirac 大統領は、イギリスに「連帯性」を呼びかけている。これに対し、Blair 首相は、過去10年間、イギリスは、フランスより2.5倍も多くの資金をEUに支払ってきたと反論している(参照)。


    リストマーク 各国の拠出金


 現在、イギリスは、EUより、年間46億ユーロの払い戻しを受けているが、その見直しの必要性は、他の加盟国政府からも主張されている。2005年上半期、EU理事会議長国を務めるルクセンブルクは、優遇策 は現在の水準で凍結し、徐々に削減することを提案しているが、イギリスはこれに合意していない。その背景には、払い戻しを受けている現在でも、同国は、ドイツに次いで、最も多くの資金をEUに提供していることがある(参照)。なお、現在、EU予算の40%は、農業政策 (農家への補助金)に当てられているが、農家は、EU人口の5%に過ぎない。このような状態が改善されるならば、イギリスは払い戻しの削減に応じるとしている。これに対し、フランスの Chirac 大統領は譲歩の姿勢を見せているが、フランスの農家に対する補助金の削減には反対している(参照)。

 次期EU財政計画は、来る6月16・17日の 欧州理事会 の主要議題の一つにあたるが、これは、現在の 憲法条約批准危機 の克服より困難な案件であると解される。新たな危機が生じないよう、独仏首脳は、譲歩の重要性を各国政府に訴えているが、これがイギリスに向けられたメッセージであることは明らかである。イギリスの優遇策が見直されない限り、次期財政計画について各国の合意は成立しえないと Schröder 首相は述べている(参照)。




(参照) FAZ v. 10. Juni 2005 (EU kämpft gegen den "Britenrabatt")

Tagesschau.de v. 11. Juni2005 (Paris und Berlin nehmen London in die Zange)


欧州憲法条約批准手続のゆくえ


(2005年6月12日 記)