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EUの旗 第17回 EU・ロシア首脳会談

戦略的パートナーシップ協定の締結交渉、見送られる
ロシア国旗


  2006年11月24日、ヘルシンキでEU・ロシア首脳会談が開催された。EU側からは、現議長国フィンランド の Vanhanen 首相や欧州委員会の Barroso 委員長、共通外交・安全保障政策のSolana 上級代表 などが出席し、ロシアの Putin 大統領と種々の案件について協議した。主たる議題は、戦略的パートナーシップ協定の締結交渉の開始であったが、ポーランドが拒否権を行使したため、実現していない。現在、EU・ロシア間では、パートナーシップ協定(PCA)が結ばれているが、2007年に失効するのを機に、EUは、政治、経済、文化的分野における協力関係の強化を目指し、新しい協定(戦略的パートナーシップ協定)の締結を提唱していた。特に、懸案のガス供給問題 についても、EUはロシアに協力を求める予定であった。この点について、EU内では、すでに2006年9月に見解がまとまっていたが、ポーランドが改めて反対の意向を表明したため、交渉の開始は見送られることになった。なお、新協定が締結されない限り、現行協定は自動的に更新される。

 このような事態の背景には、ポーランドの農産物は衛生基準を満たしていないとし、2005年よりロシアが輸入を禁止していることがあるが、ポーランドはこれに強く反発し、議長国フィンランドの提案をも容れず、拒否権を行使した。首脳会談の2日前、Putin 大統領は、Financial Times 紙を通じ、一部のEU加盟国は、ロシアとの関係を「敵か、味方か」といった両極端な味方をしていると批判している。また、首脳会談の直前、Putin 大統領は、EUが、ロシアと十分に協議することなく、ブルガリアとルーマニアのEU加盟(2007年元旦加盟)について決定したことに遺憾の意を示し、両国からの農産物の輸入も禁止することもありうるとも述べている(この措置は、EU全域にも及ぶ可能性があるとされる)。ロシアの輸入禁止措置について、現在、EU側は団結して行動していると捉えることができ、欧州委員会は、農産物の衛生基準について、数日中に、ロシア政府と協議するとしている。なお、ブルガリアとルーマニアのEU加盟時期については、まだ正式に確定していない(参照)。



リストマーク シベリア上空通行料の廃止

 他方、シベリア上空を通過する航空機に課されていた通行料を暫時削減し、2013年12月末までには完全に廃止することで見解がまとまった。この通行料をめぐる争いは20年前より存在しているが、今回、Putin 大統領が欧州委員会の提案を受け入れた背景には、ロシアのWTO加盟に関するEU側の譲歩を引き出すことがあるとされている。欧州委員会の Barrot 委員は、EUの譲歩は、この問題の解決にかかっていることを明らかにしている(参照)。なお、2006年、EU内の航空会社はシベリア上空通行料として、年間に3億3000ユーロを支払っているとされる。オーストリア航空は、この費用の削減を歓迎しているが、チケット代にどのような影響を及ぼすかどうかは分からないとしている(参照)。




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   (参考)

FAZ v. 24. November 2006 (Europaische Union - Politik - FAZ.NET - Gipfel in Helsinki: EU kann nicht mit Rusland verhandeln) 

Die Presse v. 25. November 2006 (Russland grollt - und verbilligt Flüge)

Der Standard v. 22. November 2006 (Politik mit Gas, Fleisch und Weinen)


2006年5月のEU・ロシア首脳会談


2006年10月のEU・ロシア首脳会談

(2006年11月25日 記)