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デンマーク首相、欧州統合について語る

デンマーク国旗 2005年10月12日付けのドイツの日刊紙 Frankfurter Allgemeine (FAZ) には、デンマークの Anders Fogh Rasmussen 首相(写真右)のインタビュー記事が掲載されている。10月3・4日、トルコとのEU加盟交渉が開始されたばかりであるためか(参照)、新聞社の質問は、トルコのEU加盟問題 に集中しているが、Rasmussen  首相は、過去、2度にわたって欧州統合に "No" を言いつけてきた北欧の小国の観点から、欧州憲法条約の発効や今後の欧州統合のあり方についても答えている。



Rasmussen首相

Rasumussen 首相

写真提供
Audiovisual Library European Commission

※ 

デンマーク国民は、1992年、マーストリヒト条約の批准 を、また、2000年9月には、ユーロの導入 を否決している。



 Rasmussen 首相の発言は、穏健かつリベラルで、EU内の多数意見に合致しているが、その概要は以下の通りである。


リストマーク トルコのEU加盟について


 トルコの加盟問題 に関し、我々はジレンマに立たされている。確かに、安全保障政策やトルコの民主化・制度改革を支援するといった観点から、EU加盟はプラスになるが(詳しくは こちら)、農業・地域政策や労働者の移住など、大きな問題も存在する。つまり、高人口国トルコのEU加盟は、我々を心理的に圧迫している(詳しくは こちら)。

 しかし、1999年、我々は、トルコを加盟候補国に指定し、加盟基準 の充足を要請してきた。約束は守られるべきであり、トルコが課題をこなしたのであれば、交渉を開始すべきである。しかし、トルコが全ての要件を完全に満たし、EUに加盟しうるかどうかは定かではない。それゆえ、交渉結果は、予め定められてはいない(詳しくは こちら)。


リストマーク

トルコのEU加盟が実現すれば、EU統合の密度は低下することになるのでは? トルコの加盟後、EUは自由貿易地域やコモン・ウェルスに変質するのでは?

 トルコが全ての加盟要件を満たし、ヨーロッパの一員としてEUに加盟するならば、質問のような状況は生じないであろう。


リストマーク

トルコのEU加盟が将来、実現するような場合、一部の加盟国間ではより緊密な政策協力が行われているのでは?

 加盟国間で統合のスピードが異なるというような状況(詳しくは こちら)は、望ましくない。


 なお、トルコのEU加盟が実現するような場合であれ、人(労働者)の移動の自由やその他の政策分野で、同国には(長期にわたり)例外が適用されるとされている(参照)。




リストマーク

欧州議会は、トルコの加盟の前提条件として、欧州憲法条約の発効を挙げているが、同条約の生命はもはや絶たれているのでは?

 非常に困難な質問であるが、生死の境を漂っているのではなかろうか。 批准を決定した国では生命を維持しているが、否決した国では、死んだものと考えられよう。

(参照)

ラトビア大統領の悲観論
Barroso 欧州委員会委員長の見解




リストマーク

デンマークの批准状況について

 デンマークは、いわゆる 再考期間 有効に活用し、憲法条約に関する議論を深める方針を立てている。決断は2006年初頭に下される予定である。

 当初、デンマークは、2005年9月27日に国民投票を実施する予定であったが、延期している(参照)。




リストマーク

過去2回の国民投票参照で、デンマークは欧州統合への参加を否決したことについて

 国民投票の結果にかかわらず、デンマーク国民は、EU統合に好意的である。国民が批判しているのは、官僚主義、ブリュッセルの中央集権主義や構造上の問題である。




区切り線



(参照) FAZ v. 12. Oktober 2005 ("Wir sollten mehr auf Inhalte achten als auf Verträge")

Rasummussen 首相の見解については、こちらも 参照


(2005年10月13日記)