Top      News   Profile    Topics    EU Law  Impressum          ゼミのページ



トルコのEU加盟問題と トルコの旗
オーストリア国旗オーストリア


オーストリアの懸念

 オーストリアが、トルコとの加盟交渉になかなか「ゴーサイン」を出さなかった理由として、@ 2005年10月2日に地方選挙(Stiermark 州議会選挙)が予定されていたことや、A クロアチアとの加盟交渉開始の交換条件に利用したことなどが指摘されているが、オーストリアの Schüssel 首相はこのような憶測を退けている(参照同国が根強く反対したのは、むしろ、国民の80%がトルコのEU加盟に反対していることにあろう(詳しくは こちら)。Graz 大学の Isak 教授(EU法)も世論を主たる理由として捉えている(参照)。

 国内の主要政党も、イスラム文化圏に属する国のEU加盟に反対している。唯一、緑の党は、EU加盟を支持しているが、かといって、積極的に支援しているわけではない。

 また、オーストリアは、ドイツや他のEU加盟国のように、トルコとの経済関係が強いわけではない他、トルコの圧倒的大きさを挙げることができる。なお、オーストリア国内には、13万4500人のトルコ人が移住しているが(EU内では、フランスやドイツに次いで最も多い)、国内社会への溶け込みの弱さも指摘されている。




区切り線



 ドイツ・ミュンヘン大学応用政治学研究所(Centrum für angewandte Politikforschung)の Josef Janning 所長は、オーストリアがトルコとの加盟交渉の開始に根強く反対した理由として、@ 国内政策上の要因の他に、A EU政策上の要因を挙げている。後者の点について、Janning 氏は以下のように語っている。


 従来、国内の諸政党が国境を越えて団結し、EUの政治について見解を明確に主張することは容易ではなかったが、2004年の欧州委員会の人選 の際には、各党派の主張が目立った。今回、オーストリアの Schüssel 首相は、保守派(キリスト教民主主義を掲げる諸政党)の代弁者としての役割を獲得しようとしたものと思われる。



 保守系政党の中でも、特に、ドイツの CDU・CSU は、トルコのEU加盟に強く抵抗しており、各国の同盟政党にトルコのEU加盟反対を呼びかけているが(参照)、現在、野党である CDU・CSU は外相会議には参加しえなかった。 そのため、党是を同じくするオーストリア国民党(ÖVP)の Schüssel 首相に希望を託していたと解される。


(参照) Vertretung der Europäischen Kommission, EU-Nachrichten, 2005, Nr. 35, Seite 6 ("Bürde oder Chance")




区切り線



(参照) Der Standard v. 04. Oktober 2005 (Eiserfrage: Was hat Plassnik wirklich erreicht?)

Die Presse v. 05. Oktober 2005 (Warum Österreich?)




「トルコのEU加盟問題とオーストリア」
のページに戻る


(2005年10月6日 記 10月11日 更新)