国民の立場
意見調査機関 OGM が実施したアンケートによると、オーストリア国民の61%は、トルコのEU加盟に反対しており、賛成派は、21%に過ぎない。なお、18%は態度を保留している。
同じく OGM の調査によるが、66%のオーストリア市民はトルコとの加盟交渉の開始に反対しており、賛成派は18%に過ぎないとされている(参照)。
また、ニュース雑誌 Format のインターネット上では、アンケートを実施しているが、こちらでも反対派が多数を占めている(参照)。
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なお、Die
Presse 誌によると、調査結果は安定しており、2003年に実施された OGM の調査でも、64%の市民は、トルコのEU加盟に反対していた。
Eurobarometer の委託を受け、2005年5〜7月に実施されたアンケート調査では、トルコのEU加盟に反対するオーストリア国民の割合はさらに増加し、10人中、9人は反対すると答えている。これは、EU加盟25ヶ国中、最も高い値である。
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トルコ大使館のアンケート調査
(2004年9月28日 記 2005年9月6日 更新) |
EU加盟から10年 − 低い満足度 |
2005年元旦、オーストリアのEU加盟から10年が経過した(参照)。1994年の国民投票では、ヨーロッパへの帰属意識の高まりから、3分の2の国民がEU加盟を支持し、翌年1月の加盟の際には、ウィーンで盛大な式典が催されたが、その喜びはほとんど残っていないとされる。逆に、国内ではブリュッセルに対する批判が強い。Eurobarometer
の調査によると、オーストリア以上にEUに懐疑的なのは、イギリスのみである(参照)。
もっとも、EUからの脱退(参照)を望むオーストリア国民は非常に少なく、この10年間、14〜29%の水準で推移している(参照)。これは、2000年2月、ハイダー氏が率いる極右政党 FPÖ(オーストリア自由党) が政権の座につき、他のEU加盟国より制裁措置を受けたことによっても、大きく変わっていない(参照)。このような状況を婚姻にたとえる見方もある。つまり、婚姻後、喜びは薄れ、不満は募る一方であるが、かといって、離婚には反対する夫婦が多いことに似ているとされる(参照)。
この10年間、オーストリアは、EUの民営化・市場開放政策にのっとり、通信やエネルギー調達分野における国営企業を民営化した。また、外国への貿易・投資も大幅に増加した(参照)。他方、中立政策は放棄しておらず、共通外交・安全保障政策 への完全な参加を見合わせている。また、環境政策 や 運輸政策 の面では、自らの立場を強く主張している。原子力発電の廃止もその中に含まれるが、実現する可能性は低い。今後は、トルコのEU加盟に関してどのような影響力を行使していくかが注目される(参照)。
EU理事会の持票数や、欧州議会の議席配分に関し、オーストリアは優遇されているが(参照)、常にその意見が採用されるとは限らない。そのせいもあり、指令の置き換え義務違反 を含めた EU法違反に対する訴えは、同規模の加盟国の中では突出している(参照)。
EUから受け取るよりも、多くの資金を拠出している割には、重要なポストが割り振られることは少ない(参照)。ウィーンが期待するよりも、ブリュッセルの歓迎は冷ややかであるといえるが、EUが東方に拡大するにつれ、オーストリアの地理的重要性はますます高まる(参照)。中東欧諸国との歴史的な関係を生かした外交戦略が期待される。
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