2006年10月5日付けの Süddeutsche Zeitung 紙に掲載されたインタビュー記事で、欧州委員会副委員長の Verheugen 氏(写真右)は、同委員会の官僚主義や組織・構造を厳しく批判し、波紋を広げている。批判の矛先は、特に、委員会職員(EU・EC官僚)に向けられているが、委員と職員の間には権力闘争が恒常的に存在するとされ、Verheugen
氏は、欧州委員としての立場から2万5000名の職員を包括的に叱責している。例えば、官僚の報告書は傲慢で、横柄であること、また、重要な案件は官僚同士で決定され、総局
(Directions
Générales (DG)) のトップである委員の耳に届くのは、官僚間に問題が生じたときであると述べている。そのため、官僚同士で重要事項が取り決められないよう、委員は非常に注意しなければならないと
警告している。また、欧州委員会が欧州議会のコントロールに服すのとは対照的に、官僚は議会や加盟国政府によって統制されず、民主的基盤に欠けることや、上官である委員に人事権や財政的権限がないこと、また、多くの総局が設けられているため、相互間の調整や内部の調整に非常に多くの時間が費やされていることなどが指摘されている。
Verheugen 委員の発言は多くのマスメディアでも扱われ、欧州委員会内部にも衝撃を与えているとされるが(参照)、異例なまでの辛らつな批判は、自身に対する批判をかわすためと捉えるメディアも少なくない。Verheugen 委員は、2006年4月、私的な関係にある女性官僚を自らのキャビネットの長に任命したことで批判されているが、去る8月、リトアニアで両人は手をつないで休暇を過ごした写真が一般ニュース雑誌でも取り上げられている。このように、Verheugen
委員に対する批判も見受けられる一方で、インタビューを行った Süddeutsche Zeitung 紙は、10月16日付けの論説で委員会改革の必要性を訴えている。また、Verheugen 氏の祖国ドイツは2007年上半期、EU理事会議長国を務めることになっているが(参照)、同論説は、委員会改革を主要課題の一つに挙げている。委員会の規模縮小や官僚主義の撤廃は、一般に支持されているが(前掲のインタビュー記事で、Verheugen 委員もこれらの改革を提唱している)、短期間では実現しえない。将来のEU拡大は一つの契機にあたる(委員数の削減は総局数の削減にもつながる(参照))。なお、欧州委員会は、規制緩和や官僚主義撤廃の一環として、2006年内に54の法令の簡素化を目指しているが、実現されたのは少数に留まる。
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