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 2004年6月10日〜13日
 欧 州 議 会 選 挙

事 前 予 測


 歴史的な拡大より約6週間後の6月10〜13日、EU加盟25か国では欧州議会選挙が実施される。1979年に直接選挙が導入されてから参照、今回で第6回を数える大規模な国際選挙は、とりわけ関心の低さと、独自性の欠如が指摘されている。


 星 投票率

 欧州議会選挙の投票率は、回を重ねるごとに、低下する傾向にあるが、状況は新加盟国においても同様であると解されている。例えば、チェコでの投票率は25パーセント程度と考えられている。

 とりわけ、欧州統合に懐疑的なイギリスでは、前回(1999年)の投票率はわずか23%であった。その他の加盟国においても、投票率は決して高くないが、欧州政治に対する市民の無関心はさらに増すものと予想される。


   リストマーク 従来の投票率  EU市民の関心が低い理由




ドイツの国旗 ドイツ国民と欧州政治


 Emnid の調査によると、欧州政治に関心のあるドイツ国民は、わずか15%とされる。実際に、1979年に直接選挙が実施されて以来
参照、欧州議会選挙の投票率は低下している。前回同様、地方選挙を同時に行うなど、投票率の上昇を目的とした措置も採られているが(前回は、6つの州で地方選挙が実施されたが、今回は、チューリンゲン州での州議会選挙の他、6つの州で地方選挙が同時に開催される)、投票率は、依然として下降傾向にあるものと解されている。

ドイツにおける欧州議会選挙投票率

1979年 1984年 1989年 1994年 1999年  2004年
63% 61% 58,5% 56,8% 49,8% 43%







 星 独自性の喪失

 今回の選挙においても、国内の政治問題が主たる争点になり、EU独自のテーマは影を潜めている。そのため、欧州議会選挙は、国内選挙の前哨戦として捉えることもできるが、高まりつつある政治不信は、各国の与党に悪い影響を及ぼすものと考えられる。


   リストマーク 従来の選挙結果




ドイツの国旗 ドイツの国内政治と欧州議会選挙


 4期16年(1982〜1998年)継続した Helmut Kohl 政権に終止符を打ち、変革の必要性を国民に訴えた SPD (ドイツ社会民主党)は、1998年9月の連邦議会選挙で勝利を収めたが、10か月後の欧州議会選挙では、辛酸を嘗めざるを得なかった。主な敗因としては、租税・経済政策に対する国民の不満を挙げることができる。


1999年の欧州議会選挙の結果
SPD CDU・CSU
30.7% 48.7%


 2004年の欧州議会選挙の結果  
SPD CDU・CSU
21.5% 44.5%


 その後も、与党は苦境に立たされていたが、天災への迅速な対応や、イラク戦争への反対が評価され、SPD は、2002年9月の連邦議会選挙でも、かろうじて勝利を収めた。しかし、社会政策に対する国民の不満は強く、地方選挙では大敗を喫している。欧州議会選挙の直前に実施された連邦大統領選挙でも、野党の CDU・CSU に敗北した。今回の欧州議会選挙でもこの傾向は続くものと考えられ、野党 CDU ・CSUは、政権交代を訴えている。つまり、欧州議会選挙では、EUに関する問題よりも、国内の政治問題が主たる争点となっている。


  リストマーク 欧州議会選挙のテーマ



 2004年6月の欧州議会選挙において、政権政党の SPD (ドイツ社会民主党)は、当初の予想を上回る歴史的敗北を喫した。21.5%という得票率は、全国レベルではかつてなかった低水準であるが、これは、特に、雇用政策、年金改革、また、健康保険制度改革など、本来、本領を発揮すべき社会政策の分野で国民の支持が得られなかったことを反映している。

 イラク戦争で米国の路線を支持したり、トルコのEU加盟に反対している保守政党(CDU・CSU)も議席を失ったが、前回の高得票率(48.7%)や、SPD の2倍強の得票率考慮すると、勝者として捉えることができる(得票率は44.5%)。

 SPD と連立し、政権政党の座にある「緑の党」は、欧州議会選挙に本腰を入れた数少ない政党の一つであるが、そのことのみならず、外交政策一般に対する高い評価を基盤に前回よりも得票率を伸ばした。なお、Fischer (フィッシャー)外相は、この政党に所属しており、ドイツでもっとも評判のよい政治家である。

  リストマーク 選挙結果について (ZDF) 欧州議会