2004年10月1日、欧州委員会は、EU内の社会状況に関する年次報告書を公表した(参照)。報告書は、今回で5巻目になるが、拡大EU25ヶ国 の状況を網羅するのは、今回が始めてである。その主な内容は以下の通りである。
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東方拡大 によって、EU内の生活水準は低下した。約3分の1のEU市民の収入は、平均値の75%に満たないが、その3分の2は、新規加盟国の市民である(また、新規加盟国の市民の95%にあたる)。なお、貧富の格差は、新規加盟国よりも、従来の加盟国において顕著である。
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新規加盟国の労働力や市民の高学歴を考慮すると、長期的には、EUの経済発展や社会水準の向上に寄与しうる。また、EU加盟に先立ち、新規加盟国では年金・健康保険制度が改正されているが、これは、困難な政策課題も実現しうることを如実に示している。
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25ヶ国内の社会制度ないし生活水準は異なるが、本質的に、共通の価値観を有しており、また、高齢化、高失業率、年金・健康保険制度の改革の必要性など、共通の問題を抱えている。
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同報告書が発表された前日の9月30日には、High Level Group が、拡大EUの社会政策に関する報告書を公開している(参照)。同グループは、EUの次期(2006〜2010年)雇用・社会政策の課題や問題点について検討するため、欧州委員会によって設けられた。
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