Contra (反対派)
◎ オーストリア国防省安全保障政策事務所 Erich Reiter
オーストリア国防省の安全保障政策事務所(Büro (und Direktion) für Sicherheitspolitik (BfSiPol) が発行する専門雑誌 Zeitschriftenschau 11/2004(2004年12月発刊)にはトルコのEU加盟問題に関する論考が3編、掲載されており、一般にトルコのEU加盟は支持されている(または、少なくとも反対はしていない)。
他方、同事務所の Erich Reiter 所長は、トルコのEU加盟によって、外交安全保障政策上の利益は生じないとする事務所の見解を示している。それによると、トルコの加盟によって多数の問題がEUに持ち込まれることになるとされる。とりわけ、チグリス・ユーフラテス川の水資源の利用をめぐる国際紛争(参照)は重大であるとしている。また、カフカズ山脈やクルド人問題を抱えているだけではなく、イスラエルと緊密な関係にあるため、トルコは、中東問題にも直接的ないし間接的に巻き込まれているとされる。さらに、EU加盟後、トルコは、ヨーロッパの利益のためにではなく、自国の利益のために、外交・安全保障政策を遂行すると捉えている。したがって、トルコの加盟によってEUは地理的に拡大し、また、軍事・安全保障政策面でも、大きなプラスになるとする見解に対しては、まさに逆の状況が生じると批判する一方で、トルコによってもたらされるであろう「力」をEUはすでに備えているとされる。軍事・安全保障政策上の利益は、近時、Centre for European Policy Studies (CEPS) によっても主張され、外交・安全保障政策上、東方拡大(10ヶ国の新規加盟)に匹敵する利益が生じるとしているが(参照)、確かに、トルコのEU加盟は、地域の安定化に貢献しうるが、不安定要素の方が強いと反論している(参照)。
さらに、トルコはイスラム原理主義を完全に排斥しえず、何らかの形でテロリスムと結びつくこと、また、トルコは麻薬や各物質の取引の中継地になっていることが指摘されている。
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