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220

The Court of Justice and the Court of First Instance, each within its jurisdiction, shall ensure that in the interpretation and application of this Treaty the law is observed.

In addition, judicial panels may be attached to the Court of First Instance under the conditions laid down in Article 225a in order to exercise, in certain specific areas, the judicial competence laid down in this Treaty.

 

[旧第220条]

The Court of Justice shall ensure that in the interpretation and application of this Treaty the law is observed.

 

解説

(1) 1

 旧第1項では、法秩序の維持に努める司法機関としてEC裁判所のみが挙げられていたが、新第1項は 第1審裁判所も列記している。なお、EC条約では、両裁判所が明確に区別されていないことも少なくないが、新第1項は これを区別し、また、両者を同格に扱っている。もっとも、新第225条第1項は、第1審裁判所は、あくまでも第1審であることを明記している。また、同第2項および第3項は、EC裁判所は第1審裁判所の判断を(職権で)審査しうる旨を定めている。さらに、従来の第225条第1項後段の明文の規定を覆し、先行判断を下す権限が第1審裁判所に与えられるようになったが、重要な判断はEC裁判所によって下され(第225条第3項の解説参照)、EC諸機関や加盟国による訴えは、EC裁判所の専属管轄に属する(新EC裁判所規程第51条、第225条第1項の解説参照)。これらの点で、両裁判所の役割・権限には違いがあり、唯一の「憲法裁判所」としてのEC裁判所の性格は、従来より際立っていると解される(これに対し、第1審裁判所は「行政裁判所」としての性質を有する)。将来設置されうる司法小委員会 (judicial panels) は、第1審裁判所の専門機関(特定の分野の訴えを専門的に扱う司法機関)として機能するであろうことを併せて考慮すると、ニース条約によってECの司法機関はより専門化されたと言えよう。

 両裁判所にEC法の解釈権限(先行判断権限)を与えるとすると、両裁判所が矛盾する判断を下し、EC法の解釈・適用に混乱が生じるおそれもあろう。しかし、新第220条第1項によれば、各裁判所は「その管轄権の範囲内において」解釈・適用に関する権限を行使しうる。両裁判所の管轄権は事物的に異なるため、前述した不都合は生じないであろう。

 

(2) 2

新たに設けられた第2項(従来は第1項のみであった)は、司法小委員会(judicial panels/chambres jurisdictionnelles/gerichtliche Kammern)を設置し、若干の特別の分野における司法権限を与えることができると定める。Panelsという名称は、GATTWTO紛争処理手続のパネル(小委員会)を想起させるが、panelsの前にjudicial が置かれ、司法機関としての性格が明らかにされている。

この新設機関については、第225a条(新規定)でより詳しく規定されているが、最重要事項の一つである、その管轄権はまだ特定されていない。なお、第220条第2項より、同小委員会には特別の分野における (in certain specific areas) 管轄権(特定の分野ではない)が与えられ、専門的な司法機関として機能することが読み取れる。第225a条に従い設置される小委員会の構成や権限については、第225a条(新規定)の解説を参照されたい( 225a条の解説)。

 





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