2005年2月23日、ブッシュ大統領はドイツ南西部の都市マインツを訪れ、シュレーダー(Schröder)ドイツ首相と会談した。ドイツ首相がイラクへの軍事攻撃に断固として反対して以来、両者間の関係は悪化していたが、2月23日には終始、笑みを絶やさず、2年半にわたる確執の終焉を印象付けた。今回のブッシュ大統領のドイツ訪問は、まさに両者間の和解を主たる目的にしていると解され、難解な案件( NATO改革など)は議案から外された。
世界中における自由と民主主義の確立を就任2期目の政策目標に掲げるブッシュ大統領は、強いヨーロッパの協力のなくして目標の実現は不可能と考えているが、それにはドイツとの関係改善が不可欠とされる。マインツにおいて、ブッシュ大統領は、ドイツと良好な関係を築けなければ、ヨーロッパとのよい協力関係は形成されないと述べている(参照)。なお、1989年、父親のブッシュ元大統領が同じくマインツを訪れた際には、米独関係を "parntership in leadership"
(Partner beim Führen) として高く評価していたが、現大統領は、"partnership in doing our duty"
(Partner bei der Pflichterfüllung) と見ているに過ぎない(参照)。
歴代米国大統領のドイツ訪問
75分間の会談において、両者は、NATO改革 や中国に対する制裁解除 など、見解の相違のある案件は触れられなかったが、環境保護の分野における技術協力について合意に至っている。また、シリアに対し、レバノンからの軍隊の撤退を要求する声明を出している。なお、首脳会談後、シュレーダー首相は、イラクの復興支援を強化する意向を明らかにしている。
昼食時、Bush 大統領は、イラク戦争を支持したドイツ野党 CDU の Merkel 党首とも話し会いを持ったが、その後、近隣のアメリカ軍基地に立ち寄り、自国兵の功績を称えた。ヴィースバーデン近郊のエルベンハイム(Wiesbaden-Erbenheim)には、2004年夏まで、約15ヶ月にわたりイラクに派遣されていた米兵が駐留しているが、同部隊からも133人の死者が出ている。式典において、Bush大統領はまだまだ戦い続ける意志があることを明確にしている。なお、シュレーダー首相は、米軍基地への同行を申し出ていたが、断られている。これは、同首相がイラク戦争を明瞭に批判していたためである(参照)。
ブッシュ大統領は、夜にはドイツを後にし、スロバキアへ向かった。ドイツでは一泊もすることなく、滞在は約11時間であった。
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