◎
那覇家庭裁判所平成3年4月1日審判(渉外判例百選8頁以下)
1. 事案
日本人女性Aは、アメリカ国籍の軍人Bと結婚し、Cを出産した。その後、Bは帰国することになったため、AとCも渡米し、生活していたが、婚姻生活に支障が生じ、離婚することになった。その際、未成年者であるCは、AとBの両方の親権に服するものと決定された。その後、AはCを連れて日本に戻ってきたが、Bと共同で親権を行使するのは困難なので、Aにのみ親権を与えることを那覇家庭裁判所に求めた。
2.
審判要旨
@
国際裁判管轄について
|
これは、Cの親権者について、どの国の裁判所が判断する権限を有するかという問題である。 |
|
|
「未成年者の監護その他の福祉の増進に関する問題については、未成年者の住所地の裁判所に裁判管轄権があるとするのが、各国国際私法の原則にもかない相当である」。これによると、未成年者Cの住所地は、Aと同じ日本国内にあるので、日本の裁判所が管轄権を有すると考えられる。
A
準拠法の決定について
親権者の指定ないし変更については、親子関係の問題として法例第21条(適用通則法第32条)によるべきところ、未成年者C及びBはいずれもアメリカ合衆国の国籍を有し、同国は地方により法律を異にするから、同法第28条第3項(適用通則法第38条第3項)を適用し、CとBの共通本国法であるミシガン州法が準拠法として考えられるが、一般に、ミシガン州のそれを含め米国抵触法理によれば、親権その他の子の監護に関する問題については、子の利益、福祉に最も密接に関連し、最も適切な判断をなし
うると解される裁判所が、法廷地法を適用して裁判すべきものとされている。
本件では、日本に裁判管轄権があると解するのが相当であるため(@参照)、日本の裁判所が法廷地法に従って適切な裁判をするべきものとする、いわゆる隠れた反致を認めることができる。したがって、我が国の民法に照らし、親権者を決定すべきである。
|
本件において、隠れた反致を認めないとすれば、準拠法は
どの国の法となるか。 |