法例第21条(適用通則法第32条)に従い、段階的連結をとる場合において、補充的連結説を採用した裁判例


事例

東京地判平成21128日、渉外判例百選(第3版)36

  


〔事案〕

 原告X(日本国籍を有する女性)と被告Y(韓国国籍を有する男性)は、我が国で婚姻し、生活している夫婦である。両者2人の子供(韓国籍を有する)をもうけたが、YXに対する暴力を理由に別居するようになり、その後、Xは離婚を求めて提訴した。なお、両者とも、子供を養育する意志はない。



〔判旨〕

1)離婚

 離婚については、法例第16条、第14条(適用通則法第27条、第25条)により、共通常居所地法である日本法が準拠法となる。そして、民法第770条第1項第5号に基づき、離婚請求を認容する。


2)離婚の際の親権者の決定

 @法律関係の性質決定について

  「離婚の際の親権の帰属については、法例は、離婚の準拠法(第16条、第14条)と親子関係の準拠法(第21条)のいずれによるべきかにつき、明言していないが、離婚の際の親権の帰属問題は、子の福祉を基準にして判断すべき問題であるから、法例第21(適用通則法第32条)の対象とされている親権の帰属・行使、親権の内容等とその判断を同じくするというべきである」として、法例第21条を適用した。


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性質決定について



 A公序について

       「親権者指定については、離婚後の子の福祉を基準に判断すべきであるところ、法例第21(適用通則法第32条)によれば、子の本国法(韓国法)と父であるYの本国法(韓国法)と同一であるから、韓国法が適用されることになるが、韓国民法第909条によれば、法律上自動的に父とされる。しかし、子の福祉を基準に考えるべき離婚後の親権者の指定につき、母が指定されない旨の右規定は、わが国の公序に反し、適用されないというほかはない。してみれば、本件においては、法例第21(適用通則法第32条)所定の第2次的準拠法である子の常居所地法(日本法)を適用するのが相当である。」




〔解説〕 

 本判決は通説・判例の法廷地法説に従わず、補充的連結説によっているが、その理由は詳細に説明されていない。また、準拠外国法を適用し、Yを親権者とすることの具体的不当性が認定されないまま、規定が公序に反すると判断している点は問題である。




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