〔事案〕
原告X(日本国籍を有する女性)と被告Y(韓国国籍を有する男性)は、我が国で婚姻し、生活している夫婦である。両者は2人の子供(韓国籍を有する)をもうけたが、YのXに対する暴力を理由に別居するようになり、その後、Xは離婚を求めて提訴した。なお、両者とも、子供を養育する意志はない。
〔判旨〕
(1)離婚
離婚については、法例第16条、第14条(適用通則法第27条、第25条)により、共通常居所地法である日本法が準拠法となる。そして、民法第770条第1項第5号に基づき、離婚請求を認容する。
(2)離婚の際の親権者の決定
@法律関係の性質決定について
「離婚の際の親権の帰属については、法例は、離婚の準拠法(第16条、第14条)と親子関係の準拠法(第21条)のいずれによるべきかにつき、明言していないが、離婚の際の親権の帰属問題は、子の福祉を基準にして判断すべき問題であるから、法例第21条(適用通則法第32条)の対象とされている親権の帰属・行使、親権の内容等とその判断を同じくするというべきである」として、法例第21条を適用した。
性質決定について
A公序について
「親権者指定については、離婚後の子の福祉を基準に判断すべきであるところ、法例第21条(適用通則法第32条)によれば、子の本国法(韓国法)と父であるYの本国法(韓国法)と同一であるから、韓国法が適用されることになるが、韓国民法第909条によれば、法律上自動的に父とされる。しかし、子の福祉を基準に考えるべき離婚後の親権者の指定につき、母が指定されない旨の右規定は、わが国の公序に反し、適用されないというほかはない。してみれば、本件においては、法例第21条(適用通則法第32条)所定の第2次的準拠法である子の常居所地法(日本法)を適用するのが相当である。」
〔解説〕
本判決は通説・判例の法廷地法説に従わず、補充的連結説によっているが、その理由は詳細に説明されていない。また、準拠外国法を適用し、Yを親権者とすることの具体的不当性が認定されないまま、規定が公序に反すると判断している点は問題である。