被告の住所または居所を普通裁判籍にする理由


1. 濫訴の防止

 原告は、何ら法的な根拠もなく訴えを提起することがある。例えば、実際には借りていない金銭の返還を裁判上で請求することがある。または、事実関係を特定することなく、むやみやたらに多くの訴えを提起することもありうる。もっとも、被告の住所地を管轄する裁判所に訴えを提起しなければならないとすれば、 原告は慎重に行動し、濫訴を回避するものと解される。

 特に、国際訴訟の場合には、他国で訴えを提起しなければならないとすれば、原告は提訴に慎重になるものと解される。


2. 被告の保護

 適式の呼び出しを受けたにもかかわらず、被告が口頭弁論期日に出頭せず、かつ、原告の請求に異議を述べないときは、裁判所は原告勝訴の判決を言い渡す(欠席判決)。そのため、被告は適切に応訴しなければならないが、原告は事前に訴訟の準備を十分に行うことができるのに対し、被告は、訴えられて初めて、請求内容を認識することもある。そのため、被告が十分な防御活動をなしうるよう、配慮する必要があるが、自らの住所地を管轄する裁判所に出頭するものとすれば、被告の負担は軽減されよう。
 

 国際訴訟の場合には、他国における裁判を回避し、自国の司法制度により、自らの母語で応訴することを被告に保障することは、その保護につながると解される。



 このように、被告の住所地を普通裁判籍とすることは、条理にかなっていると解されるため、国際民事訴訟法上も、普通裁判籍として扱われている。




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