2005年1月12日、欧州議会は、総議員の約4分の3に当たる圧倒的多数で 欧州憲法条約 を承認し、その 批准 を支持する立場を明確にした。支持票を投じた議員は500人(73.8%)、反対票を投じた議員は137人、棄権した議員は40人であった。
憲法条約の発効に際し、議会の承認は必要ではないが、現在、9ないし11ヶ国で国民投票が予定されており(参照)、今回の採決には、EU市民に支持を訴える意義が込められている。また、各加盟国内に設置されている議会の
Information Offices を通じ、議会は、憲法に関する情報の普及に貢献するとしている。その他、2006年11月の発効を可能にするため、同年半ばまでに批准手続を終了するよう、加盟国に呼びかけている。
Corbett 議員(イギリス)と Méndez de Vigo 議員が作成した報告書では、今回の議決の詳細だけではなく、欧州憲法(両議院は、「憲法条約」ではなく、「憲法」という概念を用いている)の内容についても記されているが、憲法は、内容的にベストではないものの、大きな前進であると結論付けている。とりわけ、以下の点に長所があるとされる。
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透明性の向上
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従来の 諸条約 は一つにまとめられ、また、第2次法の種類も簡素化される(参照)。
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EUとECの混乱が解消される。
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EUの二重の正当性、共通の基本的価値、超国家性の否認、EUのシンボル などが明確に定められている。
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テロ攻撃や自然災害に対する加盟国の団結に関する規定の導入 |
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立法手続の実効性の向上と国際舞台におけるEUの活動の強化
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民主制の強化
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立法手続において、欧州議会はEU理事会(閣僚理事会)と同等の権限を有すること
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理事会の立法手続の公開
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理事会の立法手続に先立ち、国内議会には適時に情報が与えられ、加盟国の大臣と審議しうること
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欧州委員会委員長は欧州議会によって選出されること
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あらゆるEUの支出は民主的に統制されること
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EU市民の権利保護の改善
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基本権憲章が憲法内に組み込まれること
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EUには欧州人権条約の締結権限が与えられること
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EU市民は欧州委員会に法案の提出を求めうるようになること
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個人の裁判所へのアクセスが改善されること |
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他方、報告書は、4頁にわたり、欧州憲法に対する批判(より良い憲法を制定すべきとする見解)を紹介し、これを退けている。
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