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欧州憲法


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欧州憲法の概要

 欧州憲法は、条約として加盟国によって締結されることになっており、発効すれば、従来のEU条約やEC条約、また、EU基本権憲章に取って代わることになる。その構成は以下の通りである。


前文

第1部

EUの設立・ 目的EU市民権EUの権限機構制度 (Article I-1 - Article I-60)

第2部

基本権憲章 (Article II-61 - Article II-114)

第3部

EUの政策と機能 (Article III-115 - Article III-436)

第4部

一般および最終終規定 (Article IV-437 - Article IV-448)


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膨大な量の憲法条約に対するEU市民の理解


※ 草案の構成は こちら


 なお、草案には議定書も付け加えられており、欧州議会の国別議員数や、EU理事会における各国の持票数について定めている。


リストマーク 前 文 リストマーク


 前文では、ヨーロッパ諸国(民)に共通する人類の価値として、人間の平等、自由および理性を強調し、また、ヨーロッパの文化的、宗教的、人類的遺産として、人間の中心的存在、人権の不可侵性などについて謳っている。そして、ヨーロッパは、各国の多様性のもとに再結束したことが確認されている。

 なお、起草過程では、「神」について言及するかどうかについて激しい議論が交わされたが、参加者全体の合意が得られず、前文内に盛り込むことは見送られた。

     参照 「神」への言及について



リストマーク 第 1  部 リストマーク


  第1部はEUの設立・目的、EU市民権、EUの権限、機構制度について定めている。


 リストマーク E U の 設 立 ・ 基 本 的 価 値

 第I-1 条は、市民や欧州諸国の意思に基づき、憲法はEUを設立することについて定めているが(第1項)、EUの価値(第I-2 条参照)を尊重し、その増進に努めるすべての欧州諸国を迎え入れる容易があることを明確にしている(第2項)。


 第I-2条は、EUは、すべての加盟国が享有する以下の価値(諸原則)の下に設立されると定める。


人間の尊厳の尊重

自由

民主主義

平等

法治国家

少数派の権利を含めた人権の保護


 これらは、従来の価値と大きく異ならないが(EU条約第6条第1項参照)、新たに、人間の尊厳の尊重、平等と少数派の権利保護の重要性が付け加えられている。なお、上掲の価値は、@第3国のEU加盟(第I-58条)や、A加盟国に対する制裁(第I-59条)について判断する際に重要である。つまり、EUへの加盟を希望する第3国は、上掲の価値を享有していなければならず、また、その違反に際し、EUは制裁を講じることができる。


 さらに、第I-2条は、すべての加盟国社会は、多様性、無差別、寛容性、正義、連帯および男女の平等が浸透していることを特徴にしていると定めるが、これも新たな規定である。



リストマーク EUの目標

 第I-3条 は、EUの目標として、平和、EUの価値(第I-2条参照)、また、市民の幸福(well-being)の促進を挙げている(第1項)。これらの一般目標は、以下の目標によって補充される(第2項〜第3項)。


自由、安全および正義の空間の創設

自由かつ公正な競争が行われる 域内市場 の設立

 New リスボン条約の制定に際しては、フランスの Sarkozy 大統領の要請に従い、「自由かつ公正な競争が行われる」という文言が削除された。その結果、域内市場の社会的側面が相対的に強調されることになった(新EU条約第3条第3項、詳しくは こちら)。


以下の点に努めること(第I-3条第3項第1款)

均整のとれた経済成長と物価の安定を基盤とした持続的成長

高い競争力を備え、完全雇用と社会的発展を目指す社会主義的市場経済

高度の環境保護と環境水準の改善

学問・技術の発展


社会的断絶と差別を撲滅し、社会的正義・保護、男女平等、世代間の連帯、および子供の権利保護を促進すること(第I-3条第3項第2款)

経済的、社会的、および地域的協力を奨励し、加盟国間の連帯性を促進すること(第I-3条第3項第3款)

文化的および言語上の多様性を維持し、ヨーロッパ文化遺産の保護と発展に努めること(第I-3条第3項第4款)

 

 これらの目標は、従来のEUないしECの目標に重なる部分も多いが(従来のEUの目的ECの目的)、学問・技術の発展、世代間の連帯性や子供の権利保護の促進、地域的協力の促進、文化の保護は新たに設けられた目的である(参照)。


 対外的な目標として、第I-3条第4項は、以下の点に貢献すべきと定めている。

対外的にもEUの 価値 や利益を保持・促進すること

平和

安全

地球規模の持続的発展

連帯

民族相互間の尊重

自由かつ公正な貿易

貧困の撲滅

人権の保護(特に子供の権利の保護)

国際法の厳格な遵守と発展(特に、国連憲章の諸原則の尊重)

 
 

 これらの目標は、従来の共通外交・安全保障政策上の目標に共通する点が多いが、対外的な関係においても子供の権利保護に努めることは、新たに設けられた目標である(参照)。

 なお、上掲のすべての目標に上限関係はない。そのため、目標相互間での衝突や調整の必要性も否定できない。

 これらの目標はEUの任務・課題となるが、その実現に際し、EUは基本諸条約の定め(特に、EUに与えられた管轄権の態様や意思決定手続)に従わなければならない(第5項)。




 リストマーク E U の 基 本 原 則

 第I-4条は、EU内におけるサービス商品、資本および開業の自由を保障し(第1項)、また、国籍に基づくあらゆる差別を禁止している(第2項)。


リストマーク EU・加盟国間の関係

  第I-5条第1項によれば、EUは加盟国を平等に扱い、また、加盟国の独自性や政治・憲法上の制度を尊重しなければならない。また、第2項は、EUと加盟国は互いに協力し、憲法が定める目標・課題の達成に努めなければならないと定める(EUと加盟国の相互協力義務)。




リストマーク EU法の優先EUの法人格

 第I-6条 は、EU法が加盟国法に優先することを明定している(EC法の優先)。また、新たに、EUにも法人格が与えられることになった(第I-7条)。

     リストマーク 国際法人格について




リストマーク EUのシンボル

 従来より、EUの旗として用いられているものは、公式にEUの旗となる(第I-8条第1項)。

     リストマーク EUの旗について


 ベートーベンの第9交響曲最終楽章の "Ode an die Freude" がEUの歌として(同第2項)、ユーロがEUの通貨として(第4項)、また、5月9日が EUの日に指定されている(同第5項)。さらに、多様性の下に統合する("United in diversity")ことがEUのモットーに掲げられた(第3項)。


参照

 1950年5月9日、当時のフランスの外相 ロベルト・シューマンは、欧州石炭・鉄鋼共同体の設立を提唱し、EC、後のEUへの発展のきっかけを築いた(詳しくは こちら)。この5月9日は、ヨーロッパにおける第2次世界大戦終戦記念日の翌日にあたり、新しいヨーロッパの誕生の日とも捉えられており、後に、「ヨーロッパの日」に指定されている。

(参照) 5月9日はヨーロッパの日 

ヨーロッパにおける終戦記念日 

第2次世界大戦の終了とドイツ 



 なお、上掲のEUのシンボルは、欧州憲法条約において初めて第1次法内でも規定されるにいたったが、リスボン条約では削除された(詳しくは こちら)。

 


 リストマーク 基 本 権 ・ E U 市 民 権

 第I-9条 は、EU基本権憲章 が定める権利、自由および諸原則を認める(recognise)と共に(第1項)、欧州人権条約 に加盟しなければならないと定める(第2項、リストマーク 従来のEC裁判所の見解)。また、従来と同様に、欧州人権条約や加盟国憲法上、伝統的に保護されてきた人権ないし基本的自由や、EUの一般原則に当たると定める(第3項 リストマーク 参照)。





 リストマーク E U の 権 限

     
参照 こちら をクリック





 リストマーク 機 構 制 度


 リストマーク 欧州議会

 憲法草案は、議員総数の上限を736としていたが、750に変更された。なお、各国の議席数は6を下回ってはならず、また、96議席以上であってはならないことが明記された(第I-20条)。そのため、ドイツの議席は、従来の99議席より、96に削減される。

     参照 欧州議会の議席


 農業政策EUの第3の柱 の分野において、欧州議会には諮問権限しか与えられていなかったが 参照、EU理事会と共同で法律を制定する権限が与えられる。同様に、財政問題に関する立法権限も強化される(参照)。


 また、従来、議会には諸条約(第1次法)改正の発議権が与えられていなかったが(参照)、憲法条約は、議会にもこの権限を与えている(第IV-443 条第1項)。 これまで、条約改正の審議は、加盟国政府の代表によって行われていたが、憲法条約発効後、召集される協議会(Convention)には、欧州議会の代表がメンバーとして参加する。なお、EU理事会が、この協議会の召集を見送るには、欧州議会の承認を必要とする(第2項)。


参照 欧州議会の権限

欧州委員会の選任



 

 リストマーク 欧州理事会

 従来通り、欧州理事会はEUの政治目標や課題を定め、欧州統合の方針を決定する機関とされるが、立法権限を持たないことが明定された(第I-21条第1項)。

     参照 
欧州理事会について


 従来、欧州理事会は、加盟国首脳と欧州委員会委員長で構成されていたが、憲法第I-21条第2項は、さらに、新設される欧州理事会議長がこれに加わり、また、EU外相はその作業に参加すると定める。

 従来、議長国は、各国が半年ごとに交代して務めていたが (参照常任の欧州理事会議長 が任命される(欧州理事会の特定多数決による)。同議長は、EU大統領と呼ばれることもある。任期は2年半であり、1回のみ再選も認められるが(第I-22条第1項)、任期中は、個々の加盟国内で公職に就くことが禁じられる(同第3項)。


 欧州理事会議長の職務は以下の通りである(同第2項)。


欧州理事会の会議において、議長を務める。

閣僚理事会の判断に基づき、欧州委員会と共同で会議の準備を行い、また、その一貫性を保つ。

欧州理事会の団結やコンセンサスの形成を促進する。

各会議の終了後、欧州議会に報告書を提出する。

 

 さらに、理事会議長は、共通外交・安全保障政策 に関し、欧州理事会を対外的に代表する(同第2項)。


参照 

 後述するように、新設のEU外相も共通外交・安全保障政策を管轄するが参照、両者の役割分担は、次のようになると解される。

 欧州理事会議長

欧州理事会(より厳密には、EU加盟国)を代表する。

 EU外相

欧州委員会を代表する。


 なお、現在、第3国との会合には、EU理事会議長国と 共通外交安全・保障政策の上級代表 (欧州憲法発効後のEU外相)、さらに、欧州委員会委員長が参加しているが、この実務は今後も継続されるものと解される。




 リストマーク 閣僚理事会

 従来のEU理事会 (Council of EU) という名称から、閣僚理事会 (Council of Ministers) に変更された (第I-19条第2項、第I-23条)。前述した欧州理事会議長の他に、各政策分野ごとに開かれる会合(例えば、農業理事会や ECOFIN-Council など 参照) を統括する議長も任命される(第I-24条第7項)。なお、従来は、理事会議長国の大臣がこれを務めていた。

 2009年11月より、EU理事会の特定多数決は、各国とも1票の持票を有し(リストマーク 従来の持票数
55%の加盟国(かつ、少なくとも15の加盟国)が賛成し、これらの国の国民が、全EU市民の65%に相当するときに成立する。もっとも、4か国が拒否権を行使すれば、議案は否決される(第I-25条第1項)。

 
 なお、欧州委員会やEU外相が提案しないにもかかわらず、立法手続を進めるときは、加盟国の72%が賛成し、同国の国民がEU市民全体の65%に相当していなければならない(第I-25条第2項)。このような立法手続が採られるのは、例えば、以下の場合である。


EUの第3の柱 の分野において、加盟国の提案を受けて法律を制定する場合

EUの第2の柱 の分野において、理事会が自らの発案に基づき法律を制定する場合

経済・通貨政策の分野において、委員会や欧州中央銀行の勧告を受けて行動する場合

加盟国の資格の停止またはEUからの脱退について決定する場合

人員の任命



 リストマーク 欧州委員会

 憲法発効後、最初の欧州委員会には、各国より1名のメンバーが選出されるが、その後は、加盟国数の3分の2に相当する人数に削減される(第I-26条第5項、第6項)。例えば、EUが27か国体制に発展するとすれば、欧州委員会の構成員は18人となる。欧州委員会の任期が従来どおり、5年であることを考慮すれば、人員削減は2014年に初めてなされることになる。なお、欧州理事会は全会一致でこれを変更しうる。

 メンバーは、各国の人口や面積を考慮しながら、欧州理事会が全会一致で採択した決議に基づき、平等に互選される(第I-26条第6項)。2004年6月の政府間協議では、全加盟国より委員が選出されなくなる場合、委員会はすべての加盟国と緊密に協力し、各国の要請を適切に汲み取らなければならないとする宣言が採択された。

 委員会は、従来どおり、まず最初に委員長が選出される。もっとも、従来よりも、欧州議会の権限・地位が強化されている。つまり、委員長候補の選出(特定多数決)に際し、欧州理事会は、
欧州議会選挙の結果を考慮しなければならず、その任命には、欧州議会の過半数の承認を必要とする(第I-27条第1項)。なお、欧州憲法条約はまだ発効していないが、前掲規定に照らし、2004年6月の欧州委員会委員長の指名の際には、直前の議会選挙の結果が考慮された(詳しくは こちら)。

 委員長やその他のメンバーを最終的に任命するのは、欧州理事会(特定多数決)である(第I-26条第2項)。


     参照 従来の選任手続  憲法草案


 従来どおり、委員会は欧州議会によって統制され、議会が不信任案を採択すると(第III-340条)、委員全員は辞職しなければならない。なお、憲法草案には修正が施され、EU外相(欧州委員会副委員長)も辞職しなければならないことが明記された(第26条第8項)。



リストマーク
EU外相

 欧州憲法に基づき、EU外相(Union Minister for Foreign Affairs) という新しい役職が設けられるが(第I-28条)、現EU理事会事務総長の Solana 氏 初代EU外相に内定している参照

 EU外相は、欧州理事会の特定多数決によって任命されるが、任命には欧州委員会委員長の承諾を要する(第I-28条第1項第1文)。また、同様の手続によって解任されうる(同第2文)。


 EU外相の職務は、共通外交・安全保障政策 の遂行にあるが、自ら提案することによって同政策を策定するだけではなく、閣僚理事会の委任を受け行動する(第I-27条第2項)。その管轄権は、共通外交・安全保障政策だけではなく、共通安全保障・防衛政策の分野にも及ぶが、前者に関しては、EUの名において、第3者と交渉を行い、また、国際機関や国際会議の場において、EUの見解を述べる(第III-296条第2項)。その任務の遂行に際し、EU外相は、ヨーロッパ外交使節(European External Action Service)によって補佐される。同使節は、理事会や委員会の事務総局内の関係部署の職員と加盟国の外交機関より派遣された人員で構成され、加盟国の外交使節と共に行動する。なお、その組織や活動方法は、理事会が制定する法律で定められるが、この法律は、EU外相の提案を受け、欧州議会の意見を聞いた後に、委員会の承認を得て制定される(第III-296 条第3項)。



 上述したように、ヨーロッパ外交使節(European External Action Service)の組織は欧州憲法条約内で特定されていないため(理事会によって定められることになっている)、諸説が主張されており、Barroso 欧州委員会委員長Solana 上級代表(EU外相内定)の間でも見解がまとまっていないとされる。EU理事会にも、欧州委員会にも帰属しない、独自の組織として編成すべきとする案も提唱される中、欧州議会は、委員会に組み入れるべきであるとみている。その理由として、Brok 議員は、独自の組織として位置づけるならば、外交政策が政府間協力の影響を強く受けることになり(本来、ECの管轄事項に属する案件であれ、政府間協議の影響を大きく受けかねない)、委員会、さらには議会の権限を弱めることにつながることを挙げている。

 ヨーロッパ外交使節の職務も特定されていないが、従来、欧州委員会が管轄してきた政策分野(通商政策発展援助政策欧州近隣政策EU拡大)は、欧州委員会の担当領域に留まるものと解される。

 現在、124の国に設置されている欧州委員会代表部は、将来、ヨーロッパ外交使節の一部として取り込まれることになるかどうかも不明であるが、職員の領事としての活動を可能にするためには、ヨーロッパ外交使節の中に組み込むことも有益であるとする見方がある。

(参照) FAZ v. 03. März 2005 ("Unabhängig oder im Dienst der Kommission?")


 また、EU外相は、欧州委員会の副委員長を兼任するが、委員会内では外交政策を担当する他、対外的な諸問題(第3国の開発支援や通商政策など、第3国や国際機関に関わる案件)を調整する(第3項)。



 欧州憲法条約に 基づき、初めて、Minister という肩書きの付いた役職がEU機構制度に設けられるが、EU外相は、加盟国外相会議(EU理事会)を議長として主宰する((第I-28条第3項、第III-296条第1項)。

 それと同時に、EU外相には、欧州委員会の副委員長としての役職が与えられており、通商政策発展援助政策欧州近隣政策 など、対外的な政策を統括し、諸政策の一貫性を図る(第I-28条第4項参照)。

 なお、EU理事会では加盟国の利益の調整が行われるのに対し、欧州委員会は、個々の加盟国の利益のためにではなく、EU全体の利益のために行動しなければならない。EU理事会(外相会議)を主宰するだけではなく、欧州委員会の副委員長を務めるEU外相には、両機関間の調整といった重要な任務が課されている。



参照

 新設の欧州理事会議長との関係について
 
欧州委員会内部の管轄配分について




リストマーク EU裁判所

 これまで、ECの司法機関は、一般に、EC裁判所ないし欧州裁判所と呼ばれていたが、欧州憲法条約は、EU裁判所(the Court of Justice of the European Union)としている(第I-19 条第1項、第III-356条第1項参照)。また、従来の第1審裁判所は、単に裁判所ないし一般裁判所(General Court/Tribunal/Gericht)となる(第III-356条)。

 両裁判所の判事(およびEC裁判所の法務官)は、従来どおり、加盟国政府の相互承認によって任命されるが(参照)、欧州憲法条約に基づき、選任について審査する特別の小委員会(panel)が設置される(第III-357条)。任命に先立ち、加盟国政府は、この新設の委員会と協議しなければならない(第III-355条第1項、第III-356 条第2項)。




リストマーク 欧州中央銀行、会計検査院

 第I-30条ないし第I-32条 では「その他の機関」として、欧州中央銀行の他、会計検査院が挙げられているが、従来、後者は「その他の機関」ではなく、「機関」として規定されていた(EC条約第7条参照)。

     参照 従来の機構制度について



 リストマーク 法令

 憲法は、従来の第2次法の名称を次のように変更している(第I-33条〜第I-39条)。

従来の名称

新しい名称

規則

法律(欧州法)

指令

枠組法(欧州枠組法)

施行規則

規則(欧州規則)


    参照 従来の法令について




 リストマーク EU市民の民主主義参加

 EUの政策決定の透明性を高め、欧州統合を市民により身近かな形で進めるため、従来より、諸機関は、EU市民や「代表的な団体」(representative associations)にあらゆる分野に関する情報を提供し、また、その意見を聴取してきたが、このような手続は欧州憲法によって始めて基本条約の中に盛り込まれることになった(第I-47条〔草案第I-46条に同じ〕第1項〜第3項)。なお、新規定は、情報の開示方法や意見の聴取手続について詳細に定めていない。また、「代表的な団体」(representative associations)についても定義されていないため、諸機関の裁量に委ねられると解される。

 欧州委員会に法案の制定を求める市民の権利についても初めて規定された(第4項)。すなわち、「著しく多くの」(a significant number) 加盟国の国民は、欧州委員会に法案の作成を求めることができる(欧州委員会の法案制定権について)。なお、発議を求めるEU市民は、少なくとも 100万人以上でなければならないが、これらの市民が属する加盟国の数は特定されていない。この点は、後に、法律(現在の規則) によって定められる(第4項後段)。




リストマーク 財政

 第I-53 条ないし第I-56条は、EUの財政制度について定めているが、従来の制度を若干、修正している。



リストマーク 近隣諸国、加盟、脱退

 第I-57条は、EUと基本的価値を共通にする近隣諸国と友好関係を築くため、国際協定を締結し、相互の権利・義務や共通の政策の実施について定めることができるとする。憲法草案の起草者である Giscard d'Estaing 元フランス大統領 は、この規定を根拠に、トルコと緊密な関係を形成することができるとしている。なお、元大統領は、トルコのEU加盟はEUの政治的コンセプトに反するとして反対しており、代替案を提唱している(トルコのEU加盟問題については こちら

 新しい重要規定として、第I-60条 は、EUからの脱退について定めている。自主的に脱退を希望する加盟国は、欧州理事会にその旨を申し出なければならず(なお、脱退理由を明示する義務は課されていない)、これを受け、脱退の詳細や事後のEUとの関係について交渉が行われる。その成果は協定にまとめられ(第I-325条第3項参照)、EU理事会(閣僚理事会)によって締結される。EU理事会の議決は特定多数決によるが、事前に欧州議会の承認を得ていなければならない(第2項)。この協定の発効日、または、脱退の申請から2年が経過した時より、脱退国に対して、欧州憲法は適用されない。ただし、欧州理事会は、全会一致にて、この期間を延長することができる(第3項)。なお、前述した欧州理事会とEU理事会の議決に、脱退申請国の代表は参加しない。その他の加盟国の72%以上の賛成が得られ、かつ、これが、これらの加盟国の国民の65%に当たるときは、特定多数決が成立する(第4項)。一度、EUから脱退した国が、再び加盟するには、第I-58条の定める手続に従わなければならない(第5項)。


          リストマーク EUからの脱退について



リストマーク 第 2  部 リストマーク


 憲法条約の第2部(第II-61条〜第II-114条)には、2001年12月に公布された「EU基本権憲章」が盛り込まれているが、文言上の修正 も施されている。 これはEU条約やEC条約に代わる第1次法として憲法条約が締結されたことや、基本権憲章が憲法条約内に取り込まれたことに基づいている。例えば、第II-101条第4項は、「諸条約の言語」ではなく、「憲法条約の言語」(the languages of the Constitution)と定める。

 その他にも、従来の基本権憲章に対する批判を踏まえた修正もなされている。自然人と法人を区別し、生きる権利や心身を害されない権利などは自然人だけに保障される権利であることを明確にするため、ドイツ語版では、従来の Person (人)に代わり、Mensch (人間)という表現が用いられている(第II-62条 〔従来の基本権憲章第2条〕、第II-63条〔第3条〕、第II-63条〔第6条〕など)。つまり、Person とは異なり、Mensch は「人間のみを指す概念である。なお、英語版では、いずれも (every)one である。

 ところで、私生活や家庭生活、住居およびコミュニケーションの尊重について定める第II-67条(第7条)は、本来、自然人のみを対象にすると解されるが、ドイツ語版では、Mensch (人間)ではなく、Person (人)という概念が用いられている。これは、法人の事務所も「住居」として保障範囲に含まれるとするEC裁判所の判例(Case C-94/00 Roquette Frères SA [2002] ECR I-9011, para. 29. See also ECHR, judgment of 16 December 1992, Niemitz v Germany, Serie A 251-B, para. 37 = EuGRZ 1993, 65, 66 f.)を踏まえたものである。
 

    リストマーク その他の修正点について、詳しくは こちら
     

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