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Case C-149/96, Portugal v Council [1999] ECR I-8395
EC裁判所、1999年11月23日 判決 |
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1996年2月、EU理事会は、ECがインド・パキスタン両国と繊維市場のアクセスに関する了解覚書を締結することを了承する旨の決定 (Council Decision 96/386/EC, OJ 1996, No. L 153, 47) を下した。
同決定はWTO法に違反するため無効であると主張し、ポルトガル政府がEC裁判所に提訴したところ、同裁判所は、EC第2次法の違法性審査に際し、WTO諸協定を裁判規範として適用することはできないとする趣旨の判断を下し( 参照)、ポルトガルの訴えを退けた。この判断は以下の理由に基づいている。
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WTOの紛争処理手続は法的に強化されているが、DSU第22条は、一時的であるとはいえ、交渉により紛争を解決する「権限」を加盟国に与えている。司法機関がWTO諸協定に反する国内法の適用を排除すれば、行政・立法機関からこの権限を奪うことになる(paras. 36-40 and 46)。
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A |
ECの貿易パートナーであるWTO加盟国の中には、直接的効力を否認するものもあるが、ECがこれを認めるとすると、相互性の原則に基づくWTO諸協定の適用につき、不均衡が生じる(para. 45)。
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B |
WTO諸協定の締結に先立ち発せられた決定において、EU理事会は同協定の裁判規範性を否認している(para. 48)。
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以上の理由に基づき、EC裁判所は、WTO諸協定に照らした法令審査は適切ではないとしているため、その直接的効力も否認されることになる(つまり、個人は、WTO諸協定違反を理由に提訴しえないことになる)。この点は、後に下された Dior 判決 や OGT Fruchthandelsgesellschaft mbH 決定 において明確にされている。
なお、本件の原告はポルトガル政府であり、私人がWTO法規を援用し、提訴しているわけではないため、直接的効力の問題は生じない。これを踏まえた上で、同政府は、Nakajima
判決理論を援用し、確かに、GATT審査は原則として行われないが、本件ではその例外が認められると主張している。この点について、EC裁判所は、Nakajima判決やFediol判決で示された理論がWTO諸協定にも適用されることを確認した上で(参照)、本件では、新国際貿易協定に照らしEC法の適法性を審査する例外的事由は存在しないと判示している(paras.
49-51)。
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