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  EC裁判所・第1審裁判所の訴訟手続に関して

  EC裁判所と第1審裁判所の訴訟類型やその他の重要事項はEC条約内で定められているが、手続は、EC裁判所規定と両裁判所の手続規則にのっとり行われる。両裁判所に訴えが提起されたり、国内裁判所によって先行判断が求められると、事務局より全当事者に、手続の進行過程について記した書類が送られる。加盟国やECの機関が当事者となる場合を除き、通常は、EC法体系や両裁判所の訴訟手続に精通した弁護士が代理人として立てられるが、特別な資格は要求されていない。ECの諸機関や加盟国は、すでに継続している訴訟に、第三者が参加することも認められるが(補助参加)(EC裁判所手続き規則第93条、第1審裁判所規則第115条〜第116条参照)、同人は、訴訟当事者の一方がすでに主張している事項を補助しうるに過ぎない(EC裁判所規程第40条)。したがって、例えば、個人(原告)からEU理事会(被告)に対し提起された訴えによる手続にある加盟国が参加する場合、被告であるEU理事会が訴えの適法性を争わないならば、同加盟国も異議を述べることができない。もっとも、裁判所は、いかなる時であれ、職権にて、あらゆる訴訟要件の充足性について調査することができる(Case C-298/00 P, Italy v. Commission [2004] ECR I-4087, para. 35; Case T-88/02, Sniace v. Commission [2005] ECR II-1165, para. 52)。

  裁判所の手続費用は徴収されないが、弁護士費用の分担やその他の費用については、判決の中で示される。ただし、先行判断手続については、国内裁判所に判断が委ねられる。

 証人や鑑定人による証拠調べも可能であるが、実務ではまれである。EC裁判所における訴えの係属期間は、約2年で、第1審裁判所の場合は、それよりも若干長くなる。この訴訟遅延の主たる原因は、翻訳作業にある[1]。手続では、すべての EU公用語 の使用が認められているが、通常は被告が、また、EC機関に対する訴えの場合は原告が言語を指定することができる。なお、先行判断手続の場合には、先行判断を求めた国内裁判所の本国語が手続言語となる。全文書は、手続言語に翻訳されるだけではなく、また、裁判所内部用としてフランス語に翻訳される。そればかりではなく、口頭弁論手続は、多くの言語に同時通訳され、法務官の意見書や判決も最終的に全公用語に翻訳される。これらの作業のため、裁判所スタッフ(約1100人)の約3分の1以上は、翻訳作業に従事している[2]。なお、EC裁判所内部では、もっぱらフランス語が用いられている。




重要な訴訟類型について


                  
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第1審裁判所の判決・決定に対する控訴


               
   
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[1]      Hakenberg, Grundzüge des Europäischen Gemeinschaftsrechts, Verlag Vahlen 2003, 3rd edition, p. 89, para. 82.

[2]      Hakenberg, Ibidem, p. 51, para. 74.





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