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高 齢 化 社 会 に お け る 経 済 発 展


 少子・高齢化はEUの将来にも暗い影を投じているが、欧州委員会は、人口構造の変化を「挑戦かつチャンス」と捉えている。また、女性の意思決定を尊重する観点から、出産政策(Geburtenpolitik)を実施する予定はないとしている。EU行政機構の主眼は、出生ではなく、むしろ、高齢者の増加にいかに対応するかという点に置かれているが(詳しくは こちら)、これらの点に関する欧州委員会代表部(ドイツ)の質問について、Vladimír Špidla 委員(社会政策担当)、以下のように述べている 。

Spidla欧州委員

Vladimír Špidla 委員

写真提供
© European Community 2006


欧州委員会は、人口構造の変化を「挑戦かつチャンス」と捉えている。少子・高齢化が「挑戦」にあたることに異論はないが、「チャンス」という見方はどのような考えに基づいているか。

 第1に、戦後のベビーブーム世代は、文字通り「古鉄」と化しているわけではなく、大きな可能性を秘めている。団塊世代の中には、何百万人もの高学歴者がおり、また、その大半はまだまだ健康であるため、これらの者が積極的に労働市場や市民生活に関与すれば、今後、20年間の人口問題にはうまく対処しうる。

 第2に、高齢者の購買力は大きなポテンシャルを秘めている。老人の需要にみあった商品が次々と開発されれば、新しい市場(「シルバー市場」)に発展すると解されるが、高齢人口は何もヨーロッパ内でのみ増加しているわけではないため、輸出の機会も増大する。高齢化は、他のどの地域よりも、ヨーロッパにおいて始まっているため、状況に適切に対処すれば、EU企業は優位に立てよう。



現時点でも、失業率は非常に高いが、どのようにすれば高齢者を有意義な形で社会に引き入れることができるか

 市場の条件が適切に整備されれば、雇用の機会は増大するため、若者と高齢者とが競い合う必然性はない。むしろ、高い技術力を持った高齢者を労働市場から締め出す方が、我々の経済発展の観点から問題である。

 将来、高齢者の採用は企業にとって、ますます重要な課題になるが、その労働能力や健康状態を考慮することも肝要である。EUの雇用政策や差別禁止政策は、高齢者の雇用について包括的に定めている。


統計によると、若者の家族はより多くの子供を持ちたがっているが、その希望が実現しないのはなぜか。

 周知の通り、その要因は多様である。例えば、@ 育児には大きな代償を伴うこと(適切な育児世話がみつからないため、一方の親が職業を放棄を強いられる場合は特にそうである)、A 経済的不透明性から親になる責任を持てないこと、B 大学教育の終了、定職の確保、また、安定したパートナーとの生活を築くことなど、出産を希望するまでに長い時間がかかること、C そのために、出産適齢期を経過してしまうことが挙げられる。

 欧州委員会は、女性の意思決定に介入し、出産政策(Geburtenpolitik)を実施するつもりはない。むしろ、幼児、青少年、また、その家族の生活水準の向上に力をいれていく。




(参照) Vertretung der Europäischen Kommission in Deutschland, EU-NACHRICHTEN 2006, Nr. 41, Seite 5 ("Eine ältere Bevölkerung kann auch zum Wettbewerbsvorsprung werden")

「少子・高齢化の時限爆弾」

EUの社会政策

EU内の少子・高齢化対策

(2007年 2月 28日)