民 事 の 強 制 執 行 手 続


(国内事件の場合)

 裁判所が、被告(債務者)に100万円の支払いを命じる判決を下したとしても、被告がそれに任意に従うとは限らない。この場合、債権者(原告)は、自らの権利を実現するため、国に判決の執行を求めることができる。

 民事の強制執行は、当事者(例えば、勝訴判決を得た者)の申立てに基づき、裁判所または執行官によって行われる。強制執行を行う裁判所を 執行裁判所 と呼ぶが、例えば、@ 不動産に対する執行については、その所在地を管轄する地方裁判所が(民事執行法第44条第1項)、A 船舶に対する執行については、強制競売開始決定時における船舶の所在地を管轄する地方裁判所が(第113条)、B 債権に対する執行については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が(第144条第1項)、執行裁判所となる。なお、判決を下した裁判所とは異なる場合ある。また、権利義務関係を確定する機関と、それを実現する機関という点において、両裁判所の機能は異なる。


   リストマーク 外国判決の執行については こちら



 執行裁判所に強制執行を申し立てるには、実現されるべき権利の存在を公証する文書が必要になるが、これを 債務名義 と呼ぶ。例えば、@ 確定判決(通常の上訴手続では取り消すことのできない判決)、A 仮執行宣言付判決、B 抗告によらなければ不服を申し立てることのできない裁判、C 裁判上の和解調書などが挙げられる(第22条)。これらの債務名義が必要されることから、執行裁判所は、強制執行で実現される権利義務関係について自ら審査することが不要となる。当事者の申立てにより、事件記録が存する裁判所の裁判所書記官が、債務名義である判決の末尾に執行文(一般に「この債務名義の正本により、債権者甲は債務者乙に対して強制執行をすることができる」とする文)を付与すると、強制執行を実施することができる(第25条、第26条)。なお、債務者は、執行文の付与に関し、異議を申し立てることができる(第32条)。

 前述したように、不動産執行、船舶執行、債権執行などは、執行裁判所によって行われるが、同裁判所は、執行官 に執行を命じなければならない行為がある。例えば、@ 不動産の現状に関する調査(第57条第1項)、A 不動産の売却(第64条第3項)、B 船舶の強制競売に際し、必要な文書を取り上げて、執行裁判所に提出すること(第114条第1項)などである。なお、執行官は地方裁判所に配属されている(裁判所法第62条第1項)。





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