直接的効力 が否認される場合であれ、裁判所は規定の文言や趣旨をできる限り考慮しなければならない。これを
間接的効力 または Principle of consistent interpretation と呼ぶ。
EC指令の間接的効力
指令が直接的効力を有さない場合であれ、国内裁判所は、指令に合致するように国内法を解釈・適用しなければならない(Case
14/83, von Colson [1984] ECR 1891, para. 28)。あるスペイン法人(被告)の設立の有効性が問題になったケースで、被告は、法人の設立無効事由は指令(68/151)第11条内で限定列挙されており、被告会社の設立はこれに該当しないため有効であると主張したが、スペインは、この指令を所定の期間内に置き換えていなかった。国内裁判所は、指令に照らし、国内法を解釈しなければならないかという問題に対し、EC裁判所は以下のように判示している(Case
C-106/89, Marleasing [1990] ECR I-4135)
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指令の目的を達成すべき義務や、EC条約第5条(現第10条)の定める加盟国の義務を履行するため、加盟国の機関はあらゆる措置を講じなければならないが、国内裁判所もこの義務を負う。したがって、国内法の解釈・適用に際し、裁判所は、指令の文言や趣旨をできるだけ考慮しなければならない(para.
8)。それゆえ、指令(68/151)第11条で限定列挙されている以外の事由に基づき、株式会社の設立を無効と判断してはならない(para.
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このケースでは、指令の私人間における効力が問題になっているが、EC裁判所は直接的効力を否認する一方で(参照)、間接的効力は肯定している。間接的効力を認めれば、直接的効力を認めたのと同じような効果が生じる(つまり、上掲のケースでは、訴訟当事者(被告)は、指令を自らに有利に適用することができた)。また、私人間において、間接的効力を認めれば、一方に不利な状況が生じる場合もある(Case
C-443/98, Unilever [2000] ECR I-7535, paras. 45-47, 49-52)。そのため、直接的効力は否認されるのであるが(参照)、EC裁判所は、個人が
指令を援用しうるかどうかではなく、国内裁判所は指令の客観的効力(法規範性)を尊重すべきとの理由に基づき、間接的効力を認めている。
なお、加盟国と個人との関係においては、指令の文言や趣旨に合致するように国内法を解釈すれば、個人に不利な状況が生じる場合は、間接的効力は否認される(Case
80/86, Criminal proceedings against Kolpinghuis Nijmegen BV [1987] ECR 3969, paras. 13-14)。
WTO諸協定の間接的効力
こちら を参照
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