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ECのバナナ市場規則に関する法的問題


 banana  5. EC裁判所・第1審裁判所への提訴
 

前述したバナナ市場規則の制定に際しても見られたように、EC加盟各国の利害関係は、時として著しく異なるが、ECでは、これが十分に調整されることなく、多数決により、全加盟国に共通する政策が策定されうる。導入されたECの政策によって、議決に敗れた加盟国の権利ないし利益が害されることも少なくなく、このような場合、実質的には、加盟国の市民の権利ないし利益が侵害または制限される。全加盟国の権利や利益を等しく尊重するならば、ECの政策決定が麻痺しかねないことも確かであるが、多数決制度が適用される結果として、少数派または議決に敗れた加盟国の権利や利益が著しく害されることは避けるべきであろう。このような弊害は、新政策の実施までに十分な準備期間を設けたり、施行後も経過措置を設けることなどによって、少なくすることができようが なお、EC裁判所の判例によれば、準備期間や経過措置を設けない法令も当然に無効となるわけではない、それとて万全ではなく、特定の事情に基づき、ある一定の個人の権利が侵害ないし制限されることもありうる。このような個別的なケースにおいては、裁判所による権利保護は非常に重要であるため、EC裁判所による基本権審査の必要性は否定できない。なお、現在では、個人の訴えは、EC裁判所ではなく、第1審裁判所が取り扱うことになっており、同裁判所の法的判断に不服がある者はEC裁判所に控訴しうる。 

 EC裁判所と第1審裁判所による権利保護に関しては、以下の点を検討すべきである。


@ 国際法上、個人には提訴権が与えられていなかったり、制限されていることが多いが、EC法上はどうか(個人の裁判所へのアクセス権)

A EC法上、どのような権利が、どの程度、保護されるか(権利の保障範囲)。

B 自らの権利を実効的に救済するために、個人は何を主張すべきか(実効的な救済措置)。