◎ 以下の文章を読み、問題に答えなさい。また、(   )内に適語を補いなさい。

@

 EEC(欧州経済共同体)は、(   )年、(  )カ国によって設立されたが、(   )年に(   )条約が発効した際、EC(欧州共同体)に改名された。

A

 ECは関税同盟にあたるが(EC条約第23条第1項参照)、関税同盟とは何か説明しなさい。

B

 ECは、加盟国の市場を統合して(   )を設立し、貿易障壁のない自由な市場の形成を目標に掲げていたが、具体的には、以下の4つの自由の保障を課題にしていた。

 (   )の自由
 (   )の自由
 (   )の自由
 (   )の自由

 これらをEC法上の基本的自由と呼ぶが、その保障や、共同市場の創設・機能強化はなかなか実現しなかった。これは、例えば、基本的自由の保障や共同市場の設立に必要な法令の制定には、EU理事会の(    )を必要としていたためである。

  このような状況を解消するため、1986年には(   )が制定され、1992年末までに(   )を完成させることがEC条約の中で定められた(EC条約第14条)。法令の制定に必要な議決数は(   )に緩和され、また、(    )原則の観点から、(   )の立法手続への参加が認められるようになった。すなわち、理事会と(   )が共同で法律を制定することが可能になった。 

 ところで、立法手続は、各政策分野において必ずしも同じであるわけではない。そのため、前述した新しい立法手続が、他の政策分野でも適用されるとは限らない。例えば、農業政策の分野においては、理事会が単独で法令を制定することになっており(議決は特定多数の賛成票で足りる)、欧州議会は、拘束力のない意見を述べうるに過ぎない(後述D参照)。


C

  ECは加盟国より与えられた権限のみを行使することができ、このような権限は、EC条約内で明記されている。その違反は、(    )に訴えることができる。ECは、与えられた権限に基づき、法律を制定して、政策を遂行するため、(    )と呼ばれる。

D

  ECに委譲された権限の内容・程度は、政策分野ごとに異なっている。例えば、通商政策の分野では、権限が完全にECに委譲されている(このような権限をECの排他的権限と呼ぶ)。そのため、この分野においては、ECレベルにおいて、法律が統一的に制定される。

 これに対し、社会政策の分野では、権限が完全に委譲されているわけではなく、ECは加盟国法の(    )のみを行い、実質的な政策決定・遂行権限は加盟国のもとにある。加盟国法を調整するため、ECは、「規則」ではなく、(    )を制定する。加盟国はその目的を考慮し、国内法に置き換えなければならない。

 農業政策の分野におけるECの権限も「排他的ではない」、すなわち加盟国は、農業政策に関するあらゆる権限をECに委譲しているわけではないとされる。しかし、ECの権限は非常に広範囲にわたるため、ECの権限と加盟国に残された権限とを区別することは困難な場合が多い。現在では、ECレベルでの協議なしに、加盟国の政策が決定されることはほぼ皆無であると言ってよい。また、仮に加盟国が権限を有する場合であれ、ECによって何らかの措置が講じられている場合には、加盟国はそれに反する独自の措置を発することはできない (EC裁判所同旨)。従って、実質的に、ECの権限は排他的であると解してよい。

E

 農産物は各国の伝統や文化と強い係わり合いを有しているため、農業政策をECレベルで統一することは容易ではない。

 EC条約第37条第2項によれば、農業規則は、欧州委員会の提案に基づき、欧州議会の意見を聴聞した後、EU理事会によって制定される。

 理事会の議決には、1965年末(移行期間の第2段階の終了時)までは全会一致制度が、それ以後は特定多数決制度が適用されることになっていたが、その移行はスムーズに実現しなかった。その背景には、多数決制度が適用されるならば、ある加盟国が反対票を投じたとしても法案は採択されうるが、これによって自国の主権が制限されることにフランスが強く抵抗し、1965年7月より約半年間、理事会への出席を拒否し続けたことがある。フランスの理事会欠席によるECの機能麻痺状態を克服するため、加盟国は、国益に特に重要な案件に関しては、従来どおり全会一致制度が適用されることに合意した(いわゆる「ルクセンブルクの妥協」)。この議事手続は1966年より約15年間援用されたが、現在では多数決制度が適用されている。

F

 EC設立当初に比べ、欧州議会の立法権限は一般に強化されているが、農業政策の分野においては、議会は、依然として意見を述べうるに過ぎない(同意見に理事会は拘束されない)。アムステルダム条約の制定作業においても、議会の権限強化の必要性が指摘されたが、特にフランスの抵抗により、何ら改善されずに終わった(アムステルダム条約による修正後のEC条約第37条参照)。

G

 設例で挙げた「バナナ市場規則」は、バナナに関する法律であるため、農業政策上の法令と捉えることができる。また、バナナの輸入に関する法令であることを重視すれば、(    )政策上の法令となる。さらに、発展途上国からのバナナの輸入に関する法令であることに着眼すれば、(    )政策とも関わりを持つ。

「バナナ市場規則」をどの政策分野の法律と捉えるかによって立法手続が異なってくる。

 ・

農業政策の場合には、(   )の提案を受け、(   )の意見を聞いた後、(   )が特定多数決で法律を制定する。

 ・

通商政策上の法令は、欧州委員会の提案を受け、理事会が特定多数の決議に基づき発する(EC条約第133条第2項および第4項)。なお、欧州議会の協力・関与については定められていない。

  ・

第三国の発展援助に関する措置は、欧州委員会の提案に基づき、理事会と欧州議会が協力して決定する(協力手続[1]EC条約第179条第1項および第251条)。


 このように各政策分野で立法手続が異なる場合、「バナナ市場規則」は、どのようにして制定されるべきであろうか。EC裁判所の判例によれば、農業政策に重点が置かれる場合には、同政策の立法手続に従っても良いとされる。実際に、「バナナ市場規則」は農業政策分野の立法手続にのっとり制定された。




(脚注)

[1]

  この手続において、理事会は、欧州議会と共同で法令を制定するが、両者の見解が調整されない場合、法令は制定されない。この点について、入稲福智「EU法上の諸問題とマーストリヒト条約の修正(2・完)」平成国際大学論集第4号(2000年3月)39頁以下(73頁以下)を参照されたい。



Voice Home Page of Satoshi Iriinafuku