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国 連 安 保 理 の 拡 大



 2004年9月23日、ドイツの Fischer 外相は、国連総会で演説し、安全保障理事会の拡大と、自国の常任理事会入りを訴えた。すでに常任理事国である英仏は、これを支持しており、ドイツの加盟によって、安保理の地位や行動の正当性は増すとする独外相の見解に同意している参照

(写真右) Joschka Fischer ドイツ外相

ドイツの Fischer 外相

 なお、ドイツの他に、日本、ブラジル、インドも、新たに常任理事国となる意志を明確に示しているが、ドイツは、4か国そろっての常任理事会入りを訴えている。これに対し、イタリアの Frattini 外相は、一部の国の満足によって、多くの国の利益が害されるべきではないとして、4か国を批判している。また、同外相は、ドイツに反対するわけではないが、ドイツではなく、EUが安保理で議席を得るべきだとしている参照。同じくEU加盟国であるポーランドとスペインも、ドイツの常任理事国入りに反対しているとされる参照。その背景には、外交・安全保障政策が英独仏によって牛耳られるのではないかという懸念が存在している。

イタリアの Frattini 外相

Franco Frattini
イタリア外相


 さらに、すでに昨年より、欧州議会は、現在の世界情勢をよりよく反映させるには、ドイツではなく、EUが新たに常任理事会に加えられるべきであるとの見解を述べている。欧州委員会もこの立場を支持しているが、他方、ドイツ政府は、EUの常任理事会入りは、非現実的であるとしている。もっとも、長期的な目標の一つであることには変わりがないと述べている参照。ドイツ政府は、自国が第3の国連財政負担国であることを強調しているが、この論拠には説得力がないとする欧州議員も少なくない。また、ドイツ国内では、与野党を問わず、政府の方針に反対する意見が述べられている他、国の「エゴ」を批判する論説もある参照。近時のドイツの外交・安全保障政策は、EUの政策 に統合されていること、また、欧州憲法(条約) の発効に伴い、EU外相が任命されれば、同外相が25か国を代表して国連の会議に出席する必要性が生じるとし、EUの常任理事会入りを支持する考えもある。なお、仮に、ドイツが常任理事国に選ばれるようになった場合、将来、EUのために、ポストを譲る用意があるかどうかが問われることになるが、その可能性は小さいと考えられる参照

 常任理事国になりうるための客観的基準が設けられていないことも問題を複雑にしているが、Annan 国連事務総長の委託を受け発足した賢人委員会は、今年の12月までに、国連改革に関する報告書を発表することになっている。イタリアなどは、その中立かつ客観的な意見が示されるまで、結論を先送りすべきとしている。



 
(参照) FAZ  Die Welt ドイツ外相の国連演説の抜粋

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(2004年9月25日記 9月28日更新)