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    EUとイラク戦争 〜 EU市民に対するアンケート調査結果


 2003年11月、欧州委員会は、IRAQ and PEACE IN THE WORLD (PDF-File) と題する報告書を発表した。同報告書では、@ イラクへの軍事介入、A イラクの戦後復興のあり方、B 国際舞台におけるEUの役割、また、C テロリズムに対するEU市民の見解が分析されているが、これは、2003年10月8日から16日にかけて行われた電話調査の結果をまとめたものである。なお、アンケートは、イラクの復興に関する国連安保理決議1511(2003年10月16日)やマドリードにおける戦後復興支援会議(同年10月23日)に先立ち実施された。対象となったのは、現EU加盟15カ国の市民、7,515人(各国ともほぼ500人)である。

 100頁以上にも及ぶレポートの中で、興味深い点のみ紹介すると、以下の通りである。


1. イラクへの軍事介入の正当性 (報告書4頁以下)

 イラクへの軍事介入が正しかったと答えた者は29%にとどまり、反対意見は、68%にも及んだ。反対意見が多かったのは、ギリシャ(96%)、オーストリア(86%)、また、フランス(81%)である。フランスと共に軍事介入に反対したドイツの市民は、72%が戦争の正当性を否定している。

 EU加盟国の中で軍隊を派遣したイギリスとスペインでも消極的見解が多数を占めた(それぞれ、51%、79%)。



2. 戦後復興のあり方 (報告書11頁以下)

 イラクの戦後復興において、国連が主導的役割を果たすべきとする見解は58%に上り、他方、アメリカ合衆国とする見解は18%であった。EUが主導的役割を果たすべきとする見解は25%、イラク暫定政権とする意見は44%であった。

 このように、アメリカを支持する見解は最も少ないのであるが、他方、アメリカが戦後復興資金を負担すべきとする見解は65%、次いで、国連(44%)、イラク暫定政権(29%)、EU(24%)であった(報告書18頁以下)。

 人道的支援に賛成するEU市民は82%にも及ぶ一方で、平和維持のために、自国の軍隊を派遣することに反対する立場は54%で、賛成派(44%)を上回った(報告書34頁以下)。



3. 国際舞台におけるEUの立場 (報告書52頁以下)

 イラク戦争をきっかけとし、EUの国際舞台における役割が弱まったとみる見解は42%、変わらないとみる見解も同じく42%、逆に強まったとみる見解は12%であった。



4. テロリズム (報告書72頁以下)

 自国がテロの対象になる危険性については、強いという回答が55%、次いで、弱い(43%)、極めて強い(40%)、極めて弱い(34%)、非常に強い(14%)、非常に弱い(9%)であった。

 また、平和を脅かす国として考えられているのは、イスラエル(59%)、イラン、北朝鮮、米国(53%)、イラク(52%)、アフガニスタン(50%)と続いた(報告書78頁以下)。半数以上の市民が米国を危険国とみていることになる。
 



   欧州委員会の報告書 IRAQ and PEACE IN THE WORLD  (PDF-File)