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 欧州憲法  政府間協議において採択されず


 2003年12月12日、EU加盟国政府は、欧州憲法(条約)草案の採択について協議したが、見解がまとまらず、その採択は見送られた。同草案は、翌年5月のEU拡大をにらみ、EUをより民主的かつ市民に身近なものにすること、また、EUの透明性の向上や行動力の強化を目的として起草されたが、その制定が見送られたことにより、EUは、現在の問題を抱えつつ、拡大の道を歩むことになる。今後の協議の見通しはまだ立っていないが、妥協案等は、来年3月、アイルランド政府(EU理事会議長国)によって示される予定である。

 各国の見解の不一致は、特に、立法手続において見られた。2000年12月に制定されたニース条約によれば、スペインとポーランドには、その人口に不相応に多くの持票数が与えられるため、欧州憲法草案はこの点を修正しているが、これに両国は反発していた。他方、持票数の見直しを要求していた独・仏も譲歩しなかったため、憲法草案は各国の全会一致によって採択されるには至らなかった。奇しくも、この両陣営は、イラク戦争の際にも対立し、互いの立場を譲らなかった。新旧加盟国間の溝が指摘される一方で、独仏首脳は、ポーランドを含めた10カ国が来年5月、EUに加盟することそれ自体は歓迎している。もっとも、今回の事態を受け、独仏首脳は、賛同する加盟国のみで政策を実施する選択肢も残されていることが強調されている。



  立法手続の改正をめぐる2つの疑問



Q. 独仏はニース条約に賛成したはずですが・・・

 独仏両国は、ニース条約による立法手続の改正を求めているが、同条約制定当時は賛成していたのであろうか。

A.
 2000年12月、ニース条約が制定された当時、両国は、数日にわたる夜通しの作業で大事な点を見落としていたとも解されるが、その当時、両国の関心は、EU拡大に向けられていた。そのため、新規加盟国(ポーランド)に有利な持票数になったと考えられる。



Q. スペインとポーランドが妥協しないのは?


 EUや各国の代表・有識者等によって起草された欧州憲法草案をスペインとポーランドが受け入れないのはなぜか。

A.
 両国とも自国の権利ないし利益放棄に消極的であることが第1の理由であるが、その他に、両国の国内政治上の要因が絡んでいると解される。例えば、ポーランドの現政権は国民の支持を失っており、外交面でのマイナスは国内の政治力をますます弱めることになる。ちなみに、同国はまだEUに加盟していないが、「新参者ゆえに要求は控えめに・・・」という考えは、EU内では一般的ではない。





   (参考) 欧州理事会の声明 (英語)
欧州憲法について