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原子力発電の安全性確保に関する指令案  提出される


 欧州委員会の調査によれば、拡大EU25か国の電気の35%は原子力発電に頼っているとされる。ドイツなど、脱原発の動きが加速している加盟国もあるが
参照、EUレベルでみると、原子力発電量は毎年増えており、少なくとも、今後50年間は有力な代替手段は見つからないであろうとされている参照

 このような状況下、原子力発電の安全性を確保し、市民の不安を取り除くため、2004年9月8日、欧州委員会は、以下の2つの指令案を公表した。


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原子力発電所の安全性確保に関する指令(欧州委員会案)
 これは既存の法規や原則に基づき、新たにEC法を制定することと、個々のEU加盟国における安全評価制度を共通化することを目的としている。

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使用済み核燃料の処理に関する指令(欧州委員会案)
 これは廃棄物の最終処理制度を設け、また、廃棄物処理に関する研究開発の強化を加盟国に義務付けることを目的としている。


 指令案は、すでに2003年1月30日にも作成されているが、とりわけ、イギリス、フィンランドやスウェーデンの反対にあい、採択されなかった。今回の法案は、EUの立法機関である欧州議会とEU理事会の要請を踏まえ、改訂されたものである。なお、当初の指令案は、EUによる国内所轄官庁の調査についても定めていたが、この規定は削除され、安全性はもっぱら加盟国によって確保されることになった。また、核廃棄物の最終処理方法を具体的に定める試みも断念せざるをえなくなったが(これは個々の加盟国によって定められる)、エネルギー政策担当の Loyola de Palacio 欧州委員(欧州委員会副委員長)は、貯蔵期間を1年間とする法令の制定を希望していた。このように、新指令案は、より緩やかな内容になっているが、当初の目標に沿っており、また、採択される可能性が高いとされる。

 なお、新規加盟国には、より高い安全基準が設けられているが、従来の加盟国には、このような措置は設けられていない。そのため、欧州委員会は、EC裁判所に提訴し、安全性の確保に努めている。実際に、先ごろ、委員会は、4年間にわたり核廃棄物処理に関する情報の提供を拒むイギリスに対し、訴えを提起している。



(参考)

欧州委員会の公式サイト
Der Standard


(2004年9月8日記)