通 商 政 策 の 目 標 |
EC条約第131条第1項は、通商政策の目標として、国際貿易の調和のとれた発展、国際貿易障壁の段階的な撤廃および関税の引下げに貢献することを挙げている。また、同条約前文によれば、通商政策は、国際経済障壁の撤廃に寄与するものとされる。そして、EC企業の国際競争力の強化は、EC域内における関税障壁を撤廃することによって達成されるべきものとされる(同第131条第2項)。要するに、共通通商政策の目標ないし基本方針は、国際貿易の自由化にある。では、この目標に反する措置は、EC条約に抵触し無効とされるべきであろうか。換言すれば、EC条約第131条が定める通商政策の目標には法的拘束力があるかどうかということであるが、通説は、これを否定している[1]。また、EC裁判所は、国際貿易の自由化を害する措置であっても、それがECの政策を実現するためには不可欠であり、EC条約内のその他の規定によって正当化される場合には、EC条約第131条に違反しないとの判断を下している[2]。なお、通商政策の策定に関し、ECの立法機関は広範な裁量権を有しているため、EC裁判所が具体的な措置の違法性(ある法令の必要性ないしその目的の妥当性)について慎重に審査することはない。また、個人および第三国は、同条を根拠に、ECの政策の無効を主張することはできないとされる[3]。
[1] 通説によると、第131条は、単なる目標を定めるに過ぎない。See Vedder, in Grabitz and Hilf, Kommentar zum EU-Vertrag, Art. 110 EGV, para. 1. [2] Case 112/80, Dürbeck [1981] ECR 1095 (1119). [3] See Rudolf Streinz, Europarecht, Heidelberg 1996, Rdnr. 620; Albert Bleckmann, Europarecht, Köln 1997, Rdnrn. 1446 ff. (Pieper).
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