これを不服とし、Ten Oever 氏がオランダの国内裁判所に提訴したところ、同裁判所は以下の点に関する先行判断をEC裁判所に求めた。
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法律に基づかない遺族年金は、EC条約第119条(現第141条)の意味における「賃金」にあたるか。
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@の問題が肯定される場合、Ten Oever 氏は遺族年金を妻の死亡時に遡って請求しうるか、それとも、EC裁判所の Barber 判断が下された日(1990年5月17日)より後の請求のみが許されるか。または、夫人はそれ以前に死亡しているため、全く請求しえないか。
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@について、EC裁判所は、労使関係の終了後に支給される恩恵もEC条約第119条(現第141条)第2項の意味における「賃金」にあたり、一定の要件を満たす限り、年金もこれに含まれることを明らかにした上で(paras.
8-10 この要件について、詳しくは こちら)、確かに、遺族年金は、労働者に対して支給されるわけではないが、死亡した配偶者が年金制度に加盟していたこと、また、従来の労使関係に基づき支給されるものであるから、第119条の適用範囲であると判断し、遺族年金の受給資格を女性(寡婦)に限定するのは、同条によって禁止されるとした(paras.
13−14)。
また、Aの問題に関しては、Barber 判断が時間的な制限を設けているのは、年金積立と実際の支給との間には時間的なズレがあること、また、一定期間の積立額と将来の支給額との関連性を考慮したためであり、Barber
判断が下された以降の雇用期間に対して支払われる利益についてのみ、第119条を直接援用できるとした(paras. 16-20)。
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