現在、EU加盟国は、特に、 European Convention on Mutual Assistance in Criminal
Matters of 1959 に基づき、刑事判決に関する情報を交換し合っているが、この制度の欠陥や非効率性が指摘されている。とりわけ、人々が域内を自由に移動しうるEUの現状に即さないとされている。それゆえ、簡易かつ迅速な情報網の構築は、EUの優先課題にあたるとされ、2004年3月の欧州理事会や同7月のEU理事会でも、これが確認されている。
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2004年3月25〜26日、欧州理事会(ブリュッセル)は、直前に発生したスペイン列車テロを受け、テロ撲滅に関する宣言を採択しているが(参照)、同時に、刑事判決の情報交換制度の改善についても触れている。
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2004年7月19日、EU理事会(司法・内政問題)は、フランスとベルギー国内で生じた連続少女虐待事件(Fourniret
事件)を踏まえ、刑事判決の情報交換制度改善の必要性を確認している。
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将来的には、コンピュータ・ネットワークの整備が想定されているが、その導入には数年を要すると解されいてるため、2004年10月13日、欧州委員会は、暫定策として、現行制度の改善案をとりまとめ、EU理事会と欧州議会に提案した。その法的根拠は、EU条約第31条と第34条第2項第c号であり、後者の意味における「決定」の制定が提案されている(参照)。
委員会案によると、他の加盟国の国民に対して刑罰が言い渡されたときは、判決国は遅滞なくその母国に通知しなければならない(第3条)。また、他の加盟国より問い合わせを受けたときは、5日以内に返答しなければならない(第4条)。なお、情報の交換は、加盟国の中央当局間で行われる。返答を容易にするため、問い合わせは、判決国(被申請国)の公用語で記載すべきものとされ(第6条)、書式も定められている。
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