2009年3月19日、欧州委員会は規則(Regulation (EC) No 244/2009, OJ L 76, 3)を採択し、家庭用白熱電球の販売を規制するための法的基盤を整えた。白熱電球は蛍光灯に比べ電力の使用量が4倍ほど多いため(参照)、二酸化炭素の排出量を削減する観点から、その使用規制が注目されていたが、オーストラリア政府が初めてその構想を示した2007年初期の段階において、欧州委員会はまだ具体的に検討していなかった(詳しくは
こちら)。しかし、同年3月の欧州理事会で、EU内の温暖化効果排出ガスを2020年までに20%削減し(1990年比)、また、EU内のエネルギー消費量を2020年までに20%削減することが決定されたことを受け(詳しくは
こちら)、規制が不可避的となった。
委員会規則は、白熱電球だけではなく、域内市場で流通されるすべての家庭用電灯に適用されるが(その例外として第1条参照)、一定の消費電力量を上回る製品の生産および流通過程に置くことは、6つの期間に区切り、段階的に禁止される。なお、第1ステージは、2009年9月1日から翌年の8月末まである。第5ステージまでは各1年間であるが、第6ステージは2016年9月1日より開始される。
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開 始 日 |
生産および新たに流通過程におくことが禁止される透明な白熱電球の電力消費量 |
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第1ステージ |
2009年9月1日 |
100W以上 |
第2ステージ |
2010年9月1日 |
75以上 |
第3ステージ |
2011年9月1日 |
60W以上 |
第4ステージ |
2012年9月1日 |
すべての透明白熱電球 |
第5ステージ |
2013年9月1日 |
第6ステージ |
2016年9月1日 |
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なお、コーティングされた白熱電球の生産および新たに流通過程におくことは、第1ステージの開始時より禁止される。
第4ステージ以降は、もっぱら白熱電球以外のランプが規制の対象となる。例えば、第6ステージの開始時より、従来型の12Vハロゲンランプの生産・販売も禁止される。
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規制されるのは主として消費電力量である。そのため、所定の消費電力を超えれば、白熱電球に限らず規制されるが、詳細は第2附属書(Annex II)で定められている。白熱電球は、現時点ですでに同附属書内の表1(Table
1)の基準を満たしていないが、第3ステージが終了するまで、例外が認められる(上掲の表参照)。しかし、2012年9月1日から開始される第4ステージ以降は完全に規制されるため、その時点以降、1879年にエジソンが世界で始めて商品化した電球をEU内で新たに流通過程に置くこと(EU外からの輸入も含む)は禁止される。この規制によって、2020年までに、年間の電力消費量を39トンWh (規則前文参照)、また、二酸化炭素の年間排出量を
1500万トン削減できると考えられている(参照)。他方、欧州委員会によれば、製造者が電力消費量の少ない、その他のランプの製造にシフトしなければ、EU内で、最大3,000人の雇用が失われる可能性もある(参照)。なお、すでに流通過程におかれている白熱電球の販売や、すでに入手済みの白熱電球の使用を継続することは規制されない。
欧州委員会の規則は、2005年に欧州議会とEU理事会が共同で制定した指令(Directive 2005/32/EC, OJ L 191, 29)第15条第1項および第16条に従い制定されている。この第2次法は、一般に「エコデザイン指令」と呼ばれているが、環境政策ではなく、域内市場政策の一環として制定されている。つまり、同指令は、EC条約第175条第1項ではなく、第95条を根拠条文としている。そのため、白熱電球の販売規制は、環境政策ないしエネルギー政策としての性質よりも、域内市場の機能維持・強化という側面が強いことになるが、その法的妥当性については検討する必要がある。
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