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5.  無 効 判 決 の 効 果

通常、裁判所の無効判決は万人に対して効力を発するが、事実認定の明白な暇疵や裁量権の濫用を理由にダンピング防止規則が無効とされる場合には、すべての者に対して同規則が無効になるわけではない。第1審裁判所は日本製ボールベアリングに対するダンピング防止税の算定に誤りがあったことを理由に、それを無効と宣言し(Joined Cases T-163/94 and -165/94, NTN Corporation and Koyo Seiko v Council [1995] ECR II-1381)、この判決はEC裁判所によって確認されたが(Case C-245/95 P, Commission v NTN Corporation and Koyo Seiko [1998] ECR, I-401)、これを受け、別の業者が提訴したところ、EC裁判所は、前の判決では特定の企業(原告)の製造したボールベアリングに対するダンピング防止税の無効が確認されたまでで、規則全体が無効になるわけではないと判示した(Case C-239/99, Nachi Europe v HZA Krefeld [2001] ECR I-1197, paras. 27 and 40)。このことは、理事会の事実認定に明白な誤りがあるため、規則そのものに違法性があり、EC条約第230条第5項所定の提訴期間内に訴えが提起されていたならば、裁判所は問題の規則を無効と判断しうる場合であっても異ならない。すなわち、提訴期間後に訴えが提起されるような場合は、もはや司法審査が及ばない。

 




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