EUの夏時間制度



 2022年3月27日(日)、EU内では「夏時間」が始まりました!

 ここでの「夏時間」とは、時計の針を通常より1時間進めることを指します。そのため、例えば、午後7時は午後8時となり、夏場は午後8時頃でも日が照っていることになります。

時刻を1時間進める
午後7時 → 午後8時

 春から夏にかけて、日照時間は北に行けば行くほど長くなりますが、ヨーロッパの都市の大半は北海道の北端よりさらに北に位置しています。つまり、我が国と比較すると、ヨーロッパはかなり北方にあり、春・夏季、日照時間は非常に長くなります。フィンランドの北方では「白夜」を体験できるほどです。

我が国とヨーロッパ ー 緯度で比較

 この季節的特性を生かして夜間の電力消費量を抑えるため、ヨーロッパ諸国は「夏時間」を採用していますが(参照)、EU加盟国間で制度が異なっていると混乱します。そのため、1980年、EUは制度を統一し、3月の最後の日曜日から9月の最後の日曜日までの期間、「夏時間」を適用することにしました(Council Directive 80/737/EEC )。

 その後、この期間は10月最後の日曜日まで延長され、EUの制度して確立しました(Directive 2000/84/EC of the European Parliament and of the Council)。

 つまり、EUの「夏時間」制度によると、毎年3月最後の日曜日の午前2時に時計の針を1時間進め、毎年10月最後の日曜日の午前3時に時計の針を1時間戻します。なお、この時刻は、ブリュッセル、パリ、ベルリン、マドリッドなどで用いられている中央ヨーロッパ時間(CET)によるもので、グリニッジ標準時(GMT)より1時間、早くなっています。

夏時間
3月最後の日曜日
午前2時になると、1時間進める
夏時間

冬時間(通常の時間)
10月最後の日曜日
午前3時になると、1時間戻す
冬時間


 ところで、「夏時間」は電力消費量を減らす目的で導入されていますが、実際には、その効果は小さいとされています。また、1年に2度、時刻を変更をするのは面倒であるだけではなく、健康・体調管理に悪い影響を及ぼすと批判されています(参照)。2018年7月、EU全域で実施されたオンライン調査では、実に84%の回答者が「夏時間」制度の廃止を支持しました(参照)。

 これを受け、2019年3月、欧州議会は、1年に2度、時刻を変更する制度の廃止を決めました。そして、「夏時間」のみを適用するか、それとも「冬時間」のみにするかはEU加盟国が決定するものとしました。なお、「冬時間」とは、時刻を進めたり、遅らせたりしない「通常の時刻」を指します。

 EU加盟国(EU運輸相理事会)は2021年3月までに決定することになっていましたが、2022年3月の時点でも、加盟国の見解はまとまっていません。そのため、従来通りの「夏時間」制度が継続されています。

 なお、加盟国の見解がまとまっていないのは、EUは東西に長く、日の出時刻に差があることを主たる理由としています。例えば、「夏時間」が採用されないとすれば、夏至の日、ポーランドでは午前3時ごろに日が昇り始めます。ポーランドよりも東方にあるキプロスも「夏時間」を支持しています。

 これに対し、「夏時間」のみによるとすれば、冬季、北欧では日の出が遅くなります。そのため、フィンランド、デンマーク、オランダは「夏時間」に反対し、「冬時間」のみによるべきとしています。

 なお、スペインは南欧に分類されるものの、西方に位置するため、「冬時間」のみによると、冬至の日、大西洋岸では午前10時頃にならないと日が昇りません。これに対し、ポルトガルは、スペインよりも西にあるが、元々、標準時刻を1時間、遅らせているため、「夏時間」を支持しています(参照)。

 妥協案として、1時間ではなく、30分だけ時計の針を進める見解も出されていますが(参照)、採択される可能性は小さいとされています(参照)。

   練習問題
 




※ EUの「夏時間」制度は、EU加盟国だけではなく、スイス、ノルウェーとリヒテンシュタインにも適用される。なお、後二者は欧州経済領域(EEA)加盟国である。

※ ほとんどのヨーロッパ諸国は「夏時間」制度を採用しているが、以下の国は採用していない(参照)。

  ・アイスランド(1968年に廃止)
  ・ベラルーシ(2011年に廃止)
  ・ロシア(2014年に廃止)


サイト内全文検索